屋根瓦の種類まとめ|特徴や選び方を解説
屋根瓦は、耐久性が非常に高い屋根材です。「新築住宅で屋根瓦を使いたい」「リフォームで屋根瓦を葺き替えたい」などと検討している方も多いのではないでしょうか。
屋根瓦にはさまざまな種類があり、素材や形状などによって特徴が異なります。今回は、屋根瓦の種類を紹介するとともに、それぞれの特徴や選び方について解説します。
屋根瓦の特徴
屋根瓦には、以下のような特徴があります。
- 耐久性が高い
- 断熱性が高い
- 遮音性が高い
- デザイン性が高い
- メンテナンス費用をおさえられる
屋根瓦の代表的な特徴として挙げられるのが、耐久性の高さです。屋根の耐用年数は、20〜30年程度が一般的であるのに対し、屋根瓦の耐用年数は50年以上です。環境によっては100年以上もつ場合もあります。屋根瓦は、他の屋根材と比べ、耐久性に優れた屋根材といえます。
断熱性が高いことも、屋根瓦の特徴です。屋根瓦と下地材との間には隙間ができます。この空気層が熱を遮断する役目を果たし、快適な室温を保つことが可能です。密度が高くて厚みのある瓦は、雨音や外部からの騒音を効果的に吸収できるため、遮音性にも優れています。
屋根瓦は、瓦の色や形状、積み方などによって、さまざまな表情を生み出せる屋根材です。日本の伝統建築特有の美しさを感じるデザイン性は、屋根瓦の特徴であり、魅力でもあります。
耐久性が高い屋根瓦ですが、地震や台風、飛来物の衝突などによって損傷することもあります。屋根瓦は1枚から交換が可能です。たとえ一部が破損しても、屋根全体の瓦を替える必要はありません。メンテナンス費用を抑えられることも屋根瓦の特徴です。
屋根瓦のシェアの現状
昔から広く使用されている屋根瓦ですが、近年は他の屋根材にシェアを奪われており、減少傾向にあります。
住宅金融支援機構が一戸建て住宅を対象に行った調査「令和5年度【フラット35】住宅仕様実態調査報告」によると、屋根瓦(粘土瓦)のシェア率は、2023年現在全体の11%です。2002年の42.6%に比べると、約4分の1にまで減少しています。
一方、軽量な金属の屋根素材「ガルバリウム鋼板またはジンカリウム鋼板」は徐々にシェアを広げ、2023年現在は52.5%と全体の約半分を占める結果となりました。
地震対策として屋根材の耐震性を重視する方が増えたことも、軽量な屋根材が選ばれるようになった理由のひとつです。しかし、屋根瓦には耐久性や断熱性、デザイン性の高さなど、他の屋根材にはない魅力があります。シェア率は減少傾向を示しているものの、根強い人気があることは確かです。
参考:令和5年度【フラット35】住宅仕様実態調査報告|住宅金融支援機構
※ガルバリウム鋼板は、「日本製鉄株式会社」の登録商標です。
※ジンカリウム鋼板は、「BlueScope社」の登録商標です。
屋根瓦とその他の屋根材の種類と特徴
屋根瓦の特徴を理解したうえで、その他の屋根材の特徴と比較してみましょう。以下は、屋根瓦とその他の屋根材の種類および特徴の一覧です。
どの屋根材にもメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴を把握し、目的に合った屋根材を選んでください。
屋根瓦の種類と特徴
屋根瓦の種類は、素材によって細かく分類されており、特徴もそれぞれ異なります。ここでは「粘土瓦」「セメント瓦」「樹脂繊維セメント瓦」の3種類の屋根瓦について、詳しく解説します。
粘土瓦
粘土瓦とは、その名の通り主原料が粘土の瓦です。粘土を瓦の形に成形した後、1,000度以上の高温で焼き固めて製造します。強度が非常に強いため、外部要因による損傷を受けにくい特徴があります。屋根瓦の中でも、特に耐久性が高い瓦です。
粘土瓦は、さらに2種類にわけられます。表面に釉薬(ゆうやく)を塗った「釉薬瓦」と、釉薬を塗らずに焼き上げる「無釉薬瓦」です。
釉薬瓦の表面は、ガラス質でツヤツヤとした光沢があります。水が染み込みにくく、耐久性はより高くなります。一方、無釉薬瓦は素地そのままで焼き上げるため、表面には光沢がありません。「いぶし瓦」や「素焼き瓦」とも呼ばれており、素朴で自然な風合いが特徴です。
釉薬瓦と無釉薬瓦、いずれも寿命は30〜50年程度と長く、メンテナンスは基本的に不要です。
セメント瓦
セメント瓦とは、セメントと砂で作る瓦です。セメントそのものには、防水性がありません。そのため、防水性能を付加するための塗装が必要です。見た目は粘土瓦とよく似ていますが、瓦の角を見ることで判別できます。角が滑らかであれば粘土瓦、角張っていればセメント瓦です。
セメント瓦は、粘土瓦より価格が安く、施工をしやすいという特徴があります。1970〜1980年代に普及しましたが、2024年現在はほとんど製造されていません。より優れた屋根材が登場し、セメント瓦の需要が減少したことが要因として考えられます。
セメント瓦も比較的耐久性が高く、寿命は30〜40年程度です。経年によって塗装が剥がれると雨水が染み込んでしまうため、定期的なメンテナンスが必須です。
樹脂繊維セメント瓦
樹脂繊維セメント瓦は、ハイブリッド瓦とも呼ばれる新しいタイプの瓦です。セメントに樹脂と繊維を混ぜ合わせて製造しているため、従来のセメント瓦よりも軽量かつ耐久性が高い特徴があります。厚みは粘土瓦とほぼ同じですが、重さは半分以下です。屋根への負担を軽減でき、耐震性の向上が期待できることから、近年注目を集めています。
樹脂繊維セメント瓦は、高性能な素材を使用しているため、他の屋根材に比べて高価です。ただし、メンテナンスは不要なため、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスが高い屋根瓦といえます。
陶器瓦・粘土瓦の種類
屋根瓦は、形状によっても特徴が異なります。ここでは、「J型」「F型」「S型」の3つの形状ごとにそれぞれの特徴を解説します。
J型(日本瓦・和瓦)
J型は、 緩やかな曲線を描いた瓦です。「Japanese(日本の)」の頭文字が名前の由来とされており、「日本瓦」や「和瓦」とも呼ばれています。
J型の緩やかな曲線は、雨水を効率良く排水するのに役立ちます。曲線の部分が空気層となり、耐熱性や保温性、通気性に優れていることも特徴です。
J型は瓦の中でも代表的な形状です。J型が生み出す屋根の凹凸は、波を打ったように美しく、趣があります。その外観の良さから、現在でも多くの建物で採用されています。
F型(平板瓦)
F型は、平らな形状の瓦です。「Flat(平らな)」の頭文字が名前の由来であり、「平板瓦」とも呼ばれています。
F型は、すっきりとしたシンプルな形状のため、どのようなテイストの建物とも相性が良いです。洋風や和モダンなど、さまざまなテイストの建物で使用されています。
F型を使用した屋根瓦は、平らで凹凸がないため、太陽光パネルの設置にも適しています。近年は、瓦同士を固定し、ズレや落下を防ぐ防災瓦も人気です。
凹凸が少ない分、雨水は溜まりやすい傾向にあります。また、瓦と下板の間には隙間が少ないため、J型に比べると通気性は劣ってしまいます。とはいえ、他の屋根材と比べると機能性は十分な屋根材です。
S型(南欧風洋瓦・スパニッシュ型)
S型とは、大きな曲線を描いた形状の瓦です。「Spanish(スペイン)」の頭文字が名前の由来であり、「南欧風洋瓦」や「スパニッシュ型」とも呼ばれています。
曲線を描いた形状はJ型と似ていますが、S型の方が山となる部分の曲線が丸く、立体感があります。S型を使用した屋根は、全体的に凹凸がはっきりとしているため、個性的な印象です。オレンジや赤色などカラフルな色合いが多く、洋風の建物と相性が良いです。
曲線を描くS型は、J型と同様に水はけがよく、通気性や保温性に優れています。
屋根瓦を選ぶ際のポイント・選び方
屋根瓦にはさまざまな種類があるため、「どれを選べば良いのだろう」と悩む方も多いでしょう。屋根瓦を選ぶ際は、以下3つの項目を比較することをおすすめします。
- 金額
- 耐久性
- デザイン
それぞれのポイントについて解説します。
金額
屋根瓦の金額は、種類や形状、産地などによって大きく異なります。
天然素材を使用する粘土瓦の価格は、セメント瓦と比べて高額です。初期費用はかかるものの、耐用年数は長いため、他の屋根材と比べてメンテナンス費用はおさえられます。屋根瓦を選ぶ際には、初期費用だけでなく、メンテナンス費用も考慮したうえで検討してください。
屋根瓦の工事には、瓦の費用以外に、足場の設置や既存の屋根材の撤去といった作業費用もかかります。作業費用は依頼する業者によって異なるため、相見積もりを取り、比較することをおすすめします。
耐久性
屋根瓦は、基本的に耐用年数が長い屋根材です。より耐久性を重視するのであれば、防水性に優れた釉薬瓦を選ぶと良いでしょう。
屋根瓦はどの種類も長寿命です。しかし、正しい施工が行われていなければ早期に劣化する可能性もあります。屋根瓦の施工には知識と技術が必要となるため、実績のある業者に依頼してください。
デザイン
屋根のデザインは、家の印象を大きく左右します。どのような雰囲気にしたいか、建物全体のコンセプトに合わせて選ぶことが大切です。重厚感のある和風の建物ならJ型、和モダンな建物ならF型、地中海リゾートテイストの建物ならS型がおすすめです。
同じ屋根瓦でも、どの程度の勾配をつけるかによっても全く異なる印象となります。三角形の屋根や平らな屋根、4方向に勾配がついている屋根など、それぞれの勾配に適した瓦もあります。デザインだけで選ぶと機能面が劣る可能性もあるため、注意してください。
まとめ
屋根瓦は、素材や形状、色など種類が豊富です。それぞれに特徴があり、印象も異なるため、慎重に選んでください。
選択肢が多い反面、どれを選べば良いか迷いやすい屋根材でもあります。屋根瓦を選ぶ際には、金額や耐久性、デザインなどを総合的に判断することが大切です。自分での判断が難しい場合は、専門の業者へ相談することをおすすめします。
執筆年月日:2024年12月