ウレタン塗装とは?メリット・デメリットや費用について解説

屋根や外壁の塗装を考えた時に、「ウレタン塗装」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。以前は、屋根・外壁塗装の主流でしたが、現在はより耐久性の高い別の塗装が一般化しています。
とはいえ、ウレタン塗装がまったく使われなくなったわけではありません。ウレタン塗装にはさまざまな特徴があり、向き不向きがあります。今回は、ウレタン塗装の特徴を、費用やメリット・デメリットなどを踏まえて紹介します。
ウレタン塗装とは
ウレタン塗装とは、ウレタン塗料を用いて行われる塗装のことです。家の屋根や外壁を中心に、車や家具の塗装などにも広く活用されています。仕上がりの美しさや一定の耐久性を持ちつつも、ほかの塗料に比べ比較的安価である点が特徴です。
ちなみに、ウレタン塗料とはウレタン樹脂と顔料などを混ぜた塗料を指し、大きく「水性塗料」と「油性塗料」に分けられます。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
塗料の種類 |
特徴 |
---|---|
水性塗料 |
・水に溶かして使う |
油性塗料 |
・シンナーなどの有機溶剤で希釈してから使う |
このように、水性塗料と油性塗料は使用方法や耐久性などに大きな違いがあり、さまざまな用途に応じて使い分けられています。
ウレタン塗装は、屋根・外壁塗装の主流として活用されてきましたが、シリコン塗装の登場により、だんだんと選ばれにくくなってきています。では、シリコン塗装とはどのようなものなのでしょうか。ウレタン塗装との違いも踏まえて、くわしく紹介します。
ウレタン塗装とシリコン塗装の違い
シリコン塗装とは、シリコン塗料を用いて行われる塗装のことです。シリコン樹脂と顔料などを混ぜた塗料がシリコン塗料と呼ばれます。耐熱性や耐候性の高さが特徴で、ウレタン塗装と同様、家の屋根や外壁の塗装に用いられることが多い塗料です。
ウレタン塗装とシリコン塗装には、主に耐用年数や光沢の持続力、扱いやすさに違いがあります。両者の違いを、表を用いて確認してみましょう。
ウレタン塗装 |
シリコン塗装 |
|
---|---|---|
耐用年数 |
5~10年 |
7~15年 |
光沢の持続力 |
低い |
高い |
塗料の扱いやすさ |
扱いやすい (密着性が高い) |
扱いにくい (密着性が低い) |
シリコン塗装はウレタン塗装と比べて扱いやすさでは劣るものの、耐用年数や光沢の持続力には長けています。ツヤのある仕上がりを長期間保てることでも人気です。そのため、最近は、ウレタン塗装に代わって、シリコン塗装が屋根や外壁塗装の主流になりつつあります。
しかし、ウレタン塗装が使われなくなったわけではありません。場合によっては、ウレタン塗装の方が向いているケースもあるため、自宅に合った塗装方法を検討してみましょう。ウレタン塗装を使用すべきケースについては、後ほどくわしく紹介します。
ウレタン塗装の費用相場
ウレタン塗装の費用相場は、1平方メートルあたり1,500〜2,500円です。他の塗料に比べると比較的安価であるといわれています。参考までに、屋根・外壁塗装に使われる他の塗料の相場もみてみましょう。
塗料の種類 |
費用相場(1平方メートルあたり) |
---|---|
シリコン塗装 |
2,300~3,200円 |
フッ素塗装 |
3,000~5,000円 |
アクリル塗装 |
1,000~1,800円 |
アクリル塗装はウレタン塗装同様、比較的安価です。一方、シリコン塗装やフッ素塗装は、ウレタン塗装の倍近い費用がかかるケースもあります。また、上記は1平方メートルあたりの費用であるため、自宅の面積が大きい場合、数十万円の差が生じる可能性があることに注意しましょう。
ただし、シリコン塗装やフッ素塗装などの高価格帯の塗料は、その分耐久性が高い傾向にあります。費用対効果も加味した上で、予算の設定を行うことが大切です。
ウレタン塗装のメリット
ウレタン塗装には、おもに以下5つのメリットがあります。
- 種類が豊富
- 業者が扱いやすい
- ひび割れが起きにくい
- 高級感がある
- 価格が安い
メリットを踏まえつつ、自宅の屋根・外壁塗装のニーズに合っているかどうか見極めてみましょう。各メリットの内容について、くわしく解説します。
種類が豊富
以前はウレタン塗装が主流であったため、現在も数多くの塗料が販売されています。幅広い種類の中から、ニーズに合わせた塗料を選択できるでしょう。カラーバリエーションも豊富であるため、理想の色を見つけ出すことも可能です。
また、ウレタン塗料の中でも耐久性の高い商品、防カビ性に優れた商品など、性能に特化した塗料もあります。屋根・外壁の材質、希望に合わせた塗料も選べます。
業者が扱いやすい
ウレタン塗料は幅広く使われてきた塗料であるため、扱いに慣れている業者が多いこともメリットです。屋根や外壁だけではなく、雨どいや軒など、さまざまな部分に使用されてきました。特性を理解した上で施工を行うため、安心して塗装をお願いできるでしょう。
ウレタン塗料は昔からある塗料であるため、経験豊富な業者も多く、より美しい仕上がりも期待できます。
ひび割れが起きにくい
ウレタン塗料は、弾性のある塗料です。ゴムのように伸びる性質を持つため、塗装面にひび割れが起きにくいこともメリットだといえます。屋根材や外壁材の変化に対応できる柔軟性を持つのが特徴です。
例えば、木材は湿気などの影響により伸び縮みし、時間による変化を繰り返しています。このような特性を持つ木材に弾性のない塗料を塗ってしまうと、経年劣化に対応できずひび割れが生じてしまうのです。ウレタン塗料であれば、塗った面の形に合わせて伸縮するため、ひび割れを防止できます。
高級感がある
ウレタン塗装は、高級感のある仕上がりになることもメリットです。美しいツヤが生まれることから、屋根や外壁以外に、高級家具やフローリングにも使用されています。汚れや経年劣化によって見た目が悪くなってしまった箇所も一新できるでしょう。
中には、ウレタン塗装の特性や費用面に納得して依頼したものの、光沢のある仕上がりを好まない人もいるかもしれません。その場合は、塗料にツヤ消し剤を混ぜることでマットな仕上がりにすることが可能です。
価格が安い
費用相場のところでもお伝えしましたが、ウレタン塗装は他の塗装に比べると比較的安価です。価格の安さは、ウレタン塗装の最大のメリットだといえるでしょう。
屋根・外壁塗装は、塗装の範囲が広く、必要となる塗料の量も多くなりがちです。高価格帯のシリコン塗料やフッ素塗料を選んだ場合、その分費用もかさんでしまいます。ウレタン塗装は、一定の施工品質を持ちつつも、価格を抑えて屋根・外壁塗装を行いたい場合におすすめです。
ウレタン塗装のデメリット
さまざまなメリットがある一方で、ウレタン塗装には次のようなデメリットもあります。
- 塗装が膨らむ
- 耐久性が低い
- 変色することがある
- 長期的には高くつく
先ほどお伝えしたメリットと合わせて、屋根・外壁塗装の検討材料としてみてください。ウレタン塗装のデメリットについて、くわしく紹介します。
塗装が膨らむ
外壁に断熱材が入っている場合、外壁と塗膜の間に熱がこもってしまいます。その結果、塗装が膨らんでしまうといったデメリットが生じてしまうのです。ほかにも、施工時にサビなどの異物が混入することで空気が入り込み、塗膜が膨らんでしまうケースもあります。
塗装が膨らんでしまうと、剥がれてしまうだけではなく、見た目の美しさも損なわれてしまいます。外壁がむき出しになってしまい、雨や風などの影響を直接受けてしまうことにもなりかねません。
塗装が膨らんでしまうリスクを避けるためには、豊富な実績を持った業者を選ぶことが大切です。丁寧な説明・施工を実施している業者への依頼が好ましいでしょう。
耐久性が低い
ウレタン塗装には、一定の耐久性があることは間違いありません。しかし、シリコン塗装やフッ素塗装に比べると、耐久性は低い傾向にあります。弾力性は高いものの、硬さはないため、傷が付きやすいこともデメリットです。
耐久性が低いと、その分、塗り直しの回数も増えます。塗料代だけでなく、塗装工事代などの費用がかかってしまうことになるでしょう。
変色することがある
ウレタン塗装は、シリコン塗装やフッ素塗装よりも、変色しやすいこともデメリットです。特に紫外線や湿気による影響を受けやすく、黄色く変色してしまう可能性があります。屋根や外壁は太陽光にさらされやすいため、より変色のリスクを受けやすいでしょう。
塗装が膨らんでしまった時と同様、見た目の美しさが損なわれたり、耐久性にも影響が出たりすることが予想されるため、頻繁なメンテナンスが必要です。
長期的には高くつく
これまでにお伝えしたデメリットからも、ウレタン塗装は長期的にみてコストパフォーマンスに優れているとはいえません。他の塗料と比較すると、劣化のスピードが早く、耐久性も低いため、頻繁にメンテナンスを行う必要があります。
ウレタン塗装は1回のみの施工代でいえば、他の塗装方法よりも安価です。しかし、再塗装を繰り返すことになると、かえって割高になる可能性もあります。塗装方法を検討する場合は、長期的な視点でみていくとよいでしょう。
ウレタン塗装はどんな時におすすめ?
ウレタン塗装は、屋根や外壁塗装にはあまり選ばれなくなってきています。ただ、塗装費用を抑えたい場合や、近いうちに屋根材や外壁材を張り替える予定がある場合は、ウレタン塗装がおすすめです。
くわしい内容について、紹介します。
塗装費用を抑えたい場合
ウレタン塗装の最大のメリットは、価格の安さです。屋根や外壁の劣化が気になるけれど、他にも大きな出費があるなど、今は塗装に費用をかけられないという人はウレタン塗装を選択してもよいでしょう。
また、費用を抑えつつも、ある程度の耐久性は維持したいと考える場合は、場所によって塗装方法を変えてみる策もあります。
例えば、屋根や外壁など太陽光や雨風にさらされやすい箇所はシリコン塗装やフッ素塗装、雨どいや雨戸、戸袋などの付帯部分はウレタン塗装で行うなどの方法です。それぞれの特徴を生かしつつ、費用を抑えた塗装が実現できます。
10年以内に屋根材・外壁材を張り替える予定がある場合
最近では、屋根・外壁にはより耐久性の高い塗装を選択する業者が増えてきています。シリコン塗装は7~15年、フッ素塗装は15~20年の耐用年数があるため、これらの塗装が主流化してきているのも事実です。
10年以内に屋根材や外壁材を張り替える予定のある人が、このような耐久性の高い塗装を行うと、塗装の効果を無駄にしてしまうことになります。近いうちに屋根材や外壁材を張り替える予定がある場合は、ウレタン塗装で済ませてしまう方がお得です。
まとめ
今回は、ウレタン塗装について、費用相場やメリット・デメリットを踏まえて紹介しました。ウレタン塗装は屋根・外壁塗装の主流ではなくなってきているものの、費用の安さ、種類が豊富など、さまざまな魅力があります。自宅の屋根・外壁の状況や予算と併せて、ご自身に合った塗装を選んでください。
執筆年月日:2024年12月