陸屋根とはどんな屋根材?特徴やメリットデメリットを紹介

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陸屋根とはどんな屋根材?特徴やメリットデメリットを紹介

家の新築やリフォームを検討する際、機能性やデザインを左右する屋根選びはとても重要です。その中でも陸屋根は、モダンな外観と空間活用の可能性から注目を集めています。

この記事では、陸屋根の特徴やメリット・デメリットを紹介します。メンテナンスの方法や耐用年数などを知り、陸屋根を長く快適に使用するために必要な知識を深めていきましょう。

陸屋根とは?

陸屋根は、ほぼ平らな形状が特徴の屋根で、「ろくやね」または「りくやね」と読みます。「平屋根」「フラット屋根」「フラットルーフ」とも呼ばれています。

一般的な三角形の屋根と異なり、屋根面を屋上スペースとして有効活用できることが最大の特徴です。

これまで陸屋根は、主に商業施設やオフィスビル、マンションなどの大きな建物で採用されてきましたが、近年は戸建て住宅でも使用されています。現代的なデザインと空間の有効活用という特徴から、特に都市部で注目されているようです。陸屋根は敷地を最大限活用したい場合に適しています。

陸屋根は瓦などの屋根材を使用しない分、建設コストを抑えることも可能です。従来の傾斜屋根と比べて、モダンでスタイリッシュな印象を与えることができるでしょう。

陸屋根は、雨水をスムーズに排水するためにわずかな傾斜が付けられていますが、雨漏り対策としてしっかりとした防水処理が必要です。雪などの気候条件に応じて、適切な防水・排水設計が必要となり、定期的なメンテナンスも欠かせません。

陸屋根は、空間の有効活用とモダンなデザインを両立させた現代的な形状の屋根ですが、長く使うためにはメンテナンスについても意識する必要があります。

陸屋根のメリット

陸屋根は、平らな屋根面を活かした空間活用、メンテナンスのしやすさ、効率的な室内空間の確保など、住まいの可能性を広げる特徴を持っています。一般的な傾斜屋根にはみられない、陸屋根のメリットを紹介します。

屋根のスペースを屋上として使用できる

陸屋根の最大の特徴は、平らな屋根を屋上として有効活用できることです。家族のライフスタイルに合わせてさまざまな使い方が可能です。

  • 屋上庭園
  • 子どもの遊び場
  • 洗濯物を干す
  • 物置を置いて収納する
  • 太陽光パネルを設置

陸屋根は限られた敷地を立体的に活用できます。日当たりがよく、都市部の住宅であっても庭やバルコニーとして屋上を活用できるでしょう。

使用目的に応じて、手すりの設置、防水性能の確保、耐荷重の確認など、適切な安全対策を施す必要があります。

メンテナンスしやすい

陸屋根は平らな形状により、日常的な清掃やメンテナンスを簡単に行えます。屋根面を実際に歩けるため、ほうきでの掃除や排水溝のチェック、高圧洗浄などの作業がしやすく、細かな箇所まで目視で確認可能です。

修理や点検が必要な際も、一般的な傾斜屋根と比べて作業を効率的に進められます。資材や道具を置くスペースが確保でき、作業場所も広いため、安全に作業できます。また、傾斜屋根では必要な足場の設置も不要な場合が多く、工事にかかる時間と費用を抑えることができるでしょう。転落やケガのリスクもほとんどありません。

広く感じることができる

陸屋根は部屋の天井が平面となるため、傾斜屋根より屋根裏のスペースが広くなります。圧迫感が少なく開放感が増し、広々と感じられるでしょう。大きな窓を設置して採光を多く取ったり、収納スペースを壁際や天井まで確保したり、空間を最大限活用することが可能です。

外観も、シンプルな箱型のデザインで洗練された印象を与えます。傾斜屋根特有の重たい印象ではなく、モダンでスタイリッシュな仕上がりとなるでしょう。

陸屋根のデメリット

陸屋根特有のメリットがある一方で、最上階が蒸し暑くなる、防水処理のメンテナンスや雪かきが必要となるなどのデメリットもあります。陸屋根で生活する際の課題を知り、起こりうる問題と対処法を把握しておきましょう。

最上階が蒸し暑くなる場合がある

陸屋根は真上からの直射日光を受けるため、天井面の温度が上昇しやすく、最上階が蒸し暑くなりやすいです。一般的な傾斜屋根は、日光が斜めに当たり反射するため熱が分散されますが、陸屋根では熱が集中してしまいます。

また、空気の流れにも違いがあり、傾斜屋根では斜面に沿って自然な換気が生まれる一方、陸屋根は平らな面で空気が溜まり熱がこもりやすくなります。夏場はエアコンの効きが悪く光熱費が上がり、冬は外気の影響で室内が寒くなるかもしれません。

最上階が暑くなるのを防ぐために、以下のような対策が必要です。

  • 換気システムを導入する
  • 断熱材を入れる
  • 遮熱塗料を使う
  • 屋根面を緑地化する・ウッドデッキにする

初期費用がかかりますが、快適な室内環境を実現するために適切な対策を検討しましょう。

防水処理のメンテナンスが必要

陸屋根は傾斜屋根より水はけが悪いため、防水処理をしっかりと施すことと、定期的なメンテナンスを行うことが重要です。

屋根面は防水工事により、防水層がコーティングされ、排水システムが設置されます。周りにパラペットと呼ばれる立ち上がりを設置し、その上に笠木を取りつけることで、外壁に雨水を流さずに陸屋根の排水システムから水がはけるようになります。

陸屋根の防水処理のメンテナンスを怠ると、雨漏りや防水層のひび割れなどが発生する可能性があるため、定期的に以下の項目の点検が必要です。

  • 排水溝のごみ拾い
  • 防水層の状態チェック
  • パラペットと笠木の傷み具合をチェック

特に台風や豪雨、降雪の後は、落ち葉や水たまりが残っていないか、屋根に上って状態を確認するのがおすすめです。

雪かきが必要になる

積雪が多い地域では陸屋根の雪かきが必要です。傾斜屋根と異なり落雪の心配がなく、屋根面に上りやすいため、作業は比較的安全に行えます。

近年、北海道などの豪雪地帯では、鉄筋コンクリート構造の陸屋根住宅が増えています。積雪の重量に耐えられるよう、太い柱や梁を使用した設計が特徴です。

雪かきを怠ると、屋根のたわみやひび割れ、カビの発生、防水システムの損傷など深刻な問題につながります。作業スペースの確保や手すりと固定金具の設置など、安全な雪かき作業のための対策が重要です。

陸屋根の雨漏り対策に適した防水材料

陸屋根は、屋根材がない代わりに、屋上下地、防水層、トップコートの3層構造で、雨漏り対策をしています。2層目の防水層に使われる材料にはさまざまな種類があるため、特徴・価格・耐用年数を紹介します。

アスファルト防水

アスファルト防水は、合成繊維不織布にアスファルトを浸透させたシートを貼り重ねる工法です。防水性、接着性、耐久性のすべてに優れており、耐用年数は15~25年と他の工法より長く使用できます。

アスファルト防水の施工には熱工法、トーチ工法、常温粘着工法があり、アスファルトを溶かしたりすき間なく接着したりするために熟練の技術が求められます。施工費用は6,000~9,000円/㎡となり、他の工法より少し高めです。

平らな面にしか施工できないため、住宅よりも屋上面積が広いマンションやビルに適しています。工期が長く重量が大きいため、他の防水工法からアスファルト防水へのリフォームは難しい場合があります。

シート防水

シート防水は、厚さ1.5〜2.5mmの塩化ビニールシートを貼る工法です。耐久性と耐候性が高く、紫外線や熱に強いため、歩行頻度の高いベランダなどによく施工されています。耐用年数は10〜15年です。

柄や色の種類が多く、コストを抑えながら見栄えの良い仕上がりを実現できます。施工価格は3,500~7,000円/㎡です。

シートには伸縮性があるため、広い面積を効率的に防水処理することが可能です。リフォームの際も下地の撤去が不要で、亀裂の上からの施工ができるという利点があります。

ただし、強風地域や複雑な形状の下地には不向きという特徴があります。また、接着部分から防水性能が弱まる可能性があるため、施工には専門的な技術が必要となるでしょう。

塗膜防水

塗膜防水は、ウレタン樹脂防水とFRP防水の2種類があります。いずれも液状の樹脂を塗る防水方法のため、下地が複雑な形状でも施工可能です。すき間や継ぎ目が発生しないため高い防水性能を発揮します。

【ウレタン防水】
ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を塗って防水層を作る工法です。柔軟性と弾性があるため、複雑な場所の防水処理も可能となり、防水層に水が浸入するリスクが減ります。改修する際は上から塗り重ねるだけでよい手軽さがあります。

デメリットは乾燥に時間がかかることです。ウレタン樹脂は表面が柔らかいため、陸屋根の部分に重たい物を置くことは難しくなります。他の素材より耐久性が低く紫外線に弱いため、施工後は5年に1回程度、表面のトップコートの塗り替えが必要です。

耐用年数は8~12年で、施工価格は4,000〜7,500円/㎡となります。

【FRP防水】
FRP防水は、ガラス繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)を組み合わせて防水層を作る工法です。高い耐候性や耐熱性などを持ち、ベランダやプール、屋上駐車場などによく施工されています。

塗膜の硬化速度が速く、何層も塗り重ねる場合でも1日で施工を完了できます。伸縮性が劣るため、広い範囲の施工には向いていません。FRP防水は紫外線に弱いため、ウレタン防水同様に、5年に1回程度、トップコートの塗り替えが必要となります。

耐用年数は10~12年で、施工価格は6,000〜8,000円/㎡となります。

まとめ

陸屋根は、屋上スペースの活用やモダンなデザイン性、メンテナンスのしやすさなど、多くの魅力を持つ屋根形状である一方、最上階の暑さや防水性能の維持などへの配慮も必要です。

屋根部分の断熱材や防水材を工夫し、定期的にメンテナンスを行うことで、陸屋根の特徴を活かした快適な暮らしを実現してみてください。

執筆年月日:2024年12月

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