漆喰壁のメリット・デメリットとは?特徴や費用について解説

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漆喰壁のメリット・デメリットとは?特徴や費用について解説

近年、家の壁を漆喰壁にしたい方が増えています。漆喰は見た目が美しく、機能面でも優れた人気の素材です。しかし、費用面などデメリットもあります。設置を検討する際は、デメリットも含めて漆喰の特徴をよく理解しておきましょう。

本記事では、漆喰壁のメリット・デメリットや費用などについて詳しく解説します。漆喰壁の設置をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

漆喰の特徴

まず、漆喰の特徴について見てみましょう。漆喰は耐久性が高く、日本の古墳や神社仏閣、お城などにも使われてきた素材です。家の外壁にも内壁にも使用可能ですが、現在は内壁に使われることが多くなっています。

漆喰の主原料は、水酸化カルシウム(消石灰)です。消石灰は石灰石を焼くことで生成され、空気中の二酸化炭素と反応して、元の硬い石灰石に戻る性質を持っています。この性質を活かし、糊や水などを加えて練り上げたものが漆喰です。石灰石の元はサンゴ礁のため、漆喰は自然由来の素材です。

漆喰壁には温度や湿度を一定に保つ効果があります。静電気を発生させないため、ほこりやゴミなどがつきにくいのも特徴です。脱臭効果もあるため、トイレの壁などにも適しています。

漆喰には種類があり、大きく分けると日本の漆喰と西洋の漆喰に分かれます。主な日本の漆喰は、伝統的な工法を用いる「本漆喰」や、発酵させた藻を混ぜて熟成させる「土佐漆喰」などです。西洋の漆喰には、大理石を混ぜて作られるものなどがあります。

また、漆喰壁は工法にも特徴があります。業者や漆喰の種類によっても異なりますが、下地を整えて漆を塗り、乾燥させてからさらに重ねて漆を塗る手順で作られるのが一般的です。ビニールクロスは比較的簡単に張り替えができますが、漆喰壁の施工は技術がないと難しく、熟練した職人に依頼する必要があります。

漆喰壁の費用相場

漆喰壁の具体的な費用相場について見ていきましょう。

漆喰壁の施工にかかる費用相場は、1平方メートルあたり4,000〜8,000円ほどが目安です。この価格に含まれるのは、材料費・下地処理費・作業費などです。古い壁の撤去費用は別途発生します。

一方、ビニールクロスなどの一般的なクロスの張り替えにかかる費用は、1平方メートルあたり1,000〜1,800円ほどが目安です。この価格からわかるように、漆喰壁の費用はほかの一般的なクロスに比べて高額です。漆喰壁が高額になる理由は、職人が手作業で時間をかけて塗り重ねるため、工期が長くなることが挙げられます。

なお、下地の補修が必要かどうかなど、施工前の壁の状態によっても費用は変わってきます。施工業者によっても相場は異なるため、事前に見積もりを取って確認するようにしましょう。

漆喰壁のメリット

漆喰壁には、見た目の美しさのほか、耐久性や機能面でもさまざまなメリットがあります。以下で詳しく解説します。

耐久性が高い

漆喰は、昔のお城でも使用されるほど耐久性の高い素材です。漆喰を塗った外壁は100年以上持つともいわれており、長期間経過しても劣化しづらい点は、漆喰壁の大きなメリットといえるでしょう。

壁に塗られた漆喰は、空気中の二酸化炭素を吸収し、100年ほどかけて元の硬い石灰石に戻っていきます。時が経つにつれて岩のように硬くなるため、耐久性が増して崩れにくく堅牢な壁となります。耐久性の高さを重視する場合、漆喰壁は適した選択肢の1つです。

メンテナンスが楽

漆喰はメンテナンスが簡単な素材です。ビニールクロスの場合、時間が経つにつれて汚れや剥がれが発生し、張り替えが必要になることがあります。漆喰はその必要がなく、上から塗り重ねることで補修可能です。

すり汚れや手あかといった軽い汚れなら、消しゴムやメラニンスポンジなどを使って手軽に落とせます。また、静電気を発生させないため、ほこりがつきにくいのも漆喰の大きな魅力です。

湿度調整の機能がある

漆喰には細かい穴が開いており、その穴で湿度調整が可能です。そのため、漆喰は密閉型のビニールクロスに比べ、湿度調整の機能に優れた素材といえます。

梅雨など湿度の高い時期には湿気を吸収し、湿度の低い冬には湿気を放出する作用があるため、季節を問わず快適に過ごせます。カビなどの発生を抑える効果も期待でき、湿度や衛生面が気になる方におすすめの素材です。

燃えにくい 

漆喰は燃えにくく、防火性の高い素材です。建築材料の防火性は、建築基準法により「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」の順にランクづけされています。この中でも、漆喰はより防火性により優れた「不燃材料」に分類されている素材です。

そのため、火事など万が一の場合にも、火が燃え広がることを防げる可能性があります。また、自然由来の素材のため、ダイオキシンなどの有害物質を発生しにくい点も、漆喰の優れたポイントです。

抗菌作用に優れている 

漆喰は抗菌作用に優れた素材です。ph12と石鹸よりも強いアルカリ性を持つため、カビや細菌の発生を防ぐ効果が期待できます。

また、漆喰には「シックハウス症候群」の原因となる化学物質の1つ、ホルムアルデヒドを分解する性能もあります。シックハウス症候群は、建材から発生する化学物質やカビ、ダニなどに汚染された室内の空気を吸うことで体調不良を起こす症状です。化学物質に敏感な方や、アレルギー体質の方にもおすすめの素材です。

消臭効果がある 

消臭効果がある点も、漆喰壁のメリットです。これには、漆喰の強いアルカリ性が大きく関係しています。漆喰には複数の細かい穴が開いており、この穴から酸性のにおいを吸収し、内部の強アルカリ性で中和され、無臭な成分に分解されていきます。

とくに、生ごみや排水溝、体臭といった酸性の生活臭に対して効果的です。タバコのにおいはアルカリ性のため中和反応はしませんが、細かい穴がにおいを吸ったり吐いたりするため、通常の壁紙よりも消臭効果が期待できます。

見た目が白く美しい

漆喰は光を取り込んで反射する素材のため、白く美しい輝きを放ちます。美しい白色は漆喰壁の魅力の1つです。

漆喰は空気中の二酸化炭素と化学反応を起こし、炭酸カルシウムの結晶となり少しずつ硬化します。この結晶が光を乱反射し、漆喰特有の白さを作り出します。

漆喰壁の美しい白さは、ほかの素材では出せない色合いです。見た目の美しさを重視する方にもおすすめできる素材です。

漆喰のデメリット

漆喰はメリットの多い素材ですが、デメリットもいくつかあります。メリット・デメリットの両方をよく理解した上で検討するとよいでしょう。

費用が高い

漆喰壁は工事に手間がかかるため、ビニールクロスの壁にくらべて費用が高額になる傾向があります。できる限り費用を抑えたい場合は、漆喰壁はあまり適さないかもしれません。

しかし、漆喰はビニールクロスと異なり、定期的な張り替えの必要がない素材です。初期費用は高くなりますが、張り替えのコストがかからないため、長い目で見るとコストパフォーマンスのよい選択といえるでしょう。

また、「漆喰壁にしたいけれど費用を抑えたい」という場合、漆喰風の壁紙を選ぶ方法もあります。壁紙ならコストを抑えつつ、漆喰の質感や風合いを取り入れられます。

工期が長い

工期が長い点も、漆喰壁のデメリットです。漆喰壁は、漆喰を一度塗って完成するものではありません。専門の左官職人が、漆喰を下塗り・中塗り・上塗りと塗っていき、下地処理や乾燥の工程も必要になります。

職人が手作業で時間をかけて仕上げるため、どうしても工期が長くなってしまいます。そのため、急いでいる場合や時間をかけたくない方には向かない素材です。

依頼できる業者が限られる

漆喰塗りには技術が必要です。しかし、専門の技術を持つ職人自体が少ないため、依頼できる業者が限られます。依頼する際は、業者が漆喰壁に対応しているかどうか、事前によく確認してください。

漆喰の仕上がりは、工事を担当する人によって大きく変わります。きれいに仕上げてもらうためにも、漆喰の性質をよく知る、熟練した職人に依頼しましょう。

ひび割れの可能性がある

漆喰はひび割れをしやすいといわれています。ひび割れの主な原因には、以下が挙げられます。

  • 急激な乾燥による収縮
  • 気温が低い環境での施工
  • 塗り慣れていない人による施工

急激な乾燥による収縮や、気温の低い環境での施工は、ひび割れのリスクを高めます。漆喰の水分が急速に蒸発する夏や、寒さにより硬化作用が働きにくくなる冬は、いずれもひび割れが発生しやすい季節です。ひび割れを防ぐためには、適切な時期に依頼するのが望ましいでしょう。

また、漆喰塗りは高度な技術が必要です。下地処理から仕上げまで、全ての工程を適切に行わないと、ひび割れを招く恐れがあります。漆喰はDIYでも人気の素材ですが、誰でも簡単に扱えるものではありません。ひび割れを防ぐためにも、専門技術を持つ職人が在籍する業者への依頼がおすすめです。

カラーバリエーションが少ない

美しい白さは漆喰壁の魅力の1つですが、白色が基本となるため、カラーバリエーションが豊富ではありません。白以外の色を選択したい方にとって、色の選択肢が少ない点はデメリットといえるでしょう。

漆喰も、パステルカラーなどの淡い色合いなら着色が可能です。しかし、濃い色にするのは難しいため、希望の色での施工が可能かどうか確認が必要です。

色つきの漆喰壁は、漆喰に色粉(顔料)を混ぜて作り上げています。この色粉にペンキなどの化学成分が混ざると、自然由来による漆喰の機能に影響が出る可能性があります。アレルギー体質の方など、気になる場合は顔料にも自然素材が使われているか、業者によく確認してみましょう。

まとめ

漆喰は耐久性が高く、自然素材による機能などメリットが多いですが、「工期が長い」「費用が高い」といったデメリットもあります。メリット・デメリットの両方を考慮した上で選択してください。

また、漆喰壁はビニールクロスと違い、自力での施工が難しいものです。ひび割れを防ぎ、きれいな仕上がりにするためにも、技術のある職人が在籍する業者へ依頼しましょう。

執筆年月日:2024年12月

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