敷金礼金なしのメリット・デメリットは?注意点も徹底解説

引越しは費用がかかるため、できるだけ敷金・礼金を抑えたいと思うでしょう。しかし、敷金・礼金が無料のいわゆる「ゼロゼロ物件」が、必ずしもよいとは限りません。
何も知らずに契約すると、思わぬ出費やトラブルにつながる可能性もあるため、注意が必要です。今回は、そんな敷金礼金なし物件のメリット・デメリットや注意点について解説します。
敷金・礼金の基本
賃貸物件に引っ越す際、まず初期費用として考えなければならないのが敷金・礼金です。この章では、敷金・礼金の基本を説明しましょう。
敷金とは
敷金とは、借主が貸主に対し引っ越す際に預ける保証金のことです。一般的に、過失や故意による損傷がなければ退去時に借主に返金されます。
敷金の目的は、家賃の未払いや退去時の修繕費を担保することです。従って、管理や使い方が原因で損傷が激しく、修繕費用が敷金以上の金額になった場合は、追加請求の可能性もあります。
とはいえ、原状回復は、「借りる前の状態に戻す」という意味ではありません。たとえば、日照によるクロスの変色や画鋲の穴など、日常生活の範囲内での損傷は、貸主が修繕費を負担します。
一方、冬に結露を放置して発生した広範囲にわたるシミやカビ、下地ボードの張り替えが必要になる程のネジや釘の穴などの修繕費は、借主が負担することになるでしょう。敷金は、返金に関するトラブルも多いため注意が必要です。
礼金とは
礼金は、かつて物件の少なかった時代に、家を借りられた謝意を示すために支払われたことに由来するといわれています。賃貸契約の締結時に支払いますが、敷金とは異なり、退去時の払い戻しはありません。
初期費用を節約したい場合は、礼金無料の物件を探すか、引越しの閑散期を狙って値引き交渉するのも一案です。
地域による敷金・礼金の捉え方の違い
敷金・礼金の捉え方は地域によって異なり、関西圏では、保証金・敷引きなどの名称が用いられています。
保証金は、関東圏の敷金と同様に、部屋の損傷や家賃の未払いなどに備えて契約時に支払うお金です。敷引きは礼金と同じで、退去時の返金はありません。敷金・礼金との違いは、保証金から敷引きを差し引くことです。
たとえば、関東圏で「敷金3ヶ月分・礼金1ヶ月分」が条件の物件は、関西圏では「保証金4ヶ月分・敷引き1ヶ月分」に相当します。
敷金・礼金の相場
初期費用の敷金と礼金の大きな違いは、返金があるかどうかです。この章では、そんな敷金・礼金の相場について詳しく説明しましょう。
敷金の相場
敷金の相場は、概ね家賃の1〜2ヶ月分程度ですが、物件の条件や地域によっては高めに設定されることがあります。
たとえば、小さいお子さんが一緒のファミリータイプやペットと同居できる物件では、修繕費が通常より多くかかるという理由で、2ヶ月以上の敷金が設定されるケースもあるようです。
また、関西圏の一部の地域では、更新時に家賃を値上げする慣習がないため、初期設定は関東圏より高い傾向があります。保証金は、家賃の約3〜5ヶ月分を相場と考えておくと安全です。
礼金の相場
礼金の相場は、敷金と同様に家賃の1~2ヶ月程度です。この礼金は、敷金とは違って法的な義務はなく、不動産会社と貸主との間で設定されます。先述の通り、退去時に返金されない点にも注意が必要です。
値引き交渉もできますが、応じてもらえるかどうかは貸主や状況にもよるでしょう。家賃と礼金の相場を考慮しつつ、身の丈に合った物件を選ぶことが大切です。
敷金・礼金なし物件のメリット
敷金・礼金の相場が分かったところで、この章では、資金・礼金なし物件の2つのメリットについて説明します。
初期費用を大幅に節約できる
敷金・礼金がなければ、初期費用を大幅に節約できるでしょう。引越しでは、引越会社に支払う代金に加え、家賃の前納や不動産の仲介手数料・各種保険などの費用がかかります。
初めての一人暮らしであれば、エアコンの購入や取り付け、カーテン・収納など一通りの日用品を揃える必要もあるでしょう。敷金・礼金が無料なら、そのお金を引越しのほかの費用に充当できます。
引越しのハードルが下がる
引越しのハードルが下がるのも、メリットのひとつです。
2020年以降、日本では人口減少に伴い、不動産業界でも空き家・空き室となる賃貸物件が増加しています。そこで、敷金・礼金をなくして気軽に引っ越せるようにするという業界の配慮もあるようです。
実際、貯金の少ない学生や転勤の多い仕事に就いている若い世代は、敷金・礼金が無料になれば経済的に楽になります。短期間の居住が事前に分かっている場合も、敷金・礼金のない物件は利用しやすいでしょう。
敷金・礼金なし物件のデメリット
敷金・礼金なし物件にはメリットだけでなく、4つのデメリットがあります。気に入った物件が見つかったら、これらに該当しないかをチェックしましょう。
家賃が割高になる場合がある
敷金・礼金なし物件は、家賃が割高になる場合があります。敷金は、家賃の滞納や修繕費による出費に備えるお金です。ゼロゼロ物件では、敷金・礼金の代わりに家賃自体を高めに設定し、リスクを軽減することがあります。
たとえば、月6万円の物件が敷金・礼金なしで家賃8万円に設定されていれば、差額は2万円です。しかし、1年間に24万円多く支払う必要があり、家賃6万円の物件が敷金・礼金2ヶ月分だった場合の初期費用と同額になります。
物件を見学する際は、家賃と物件が見合っているかどうかをきちんと見定めましょう。
退去時に割高な費用を請求される可能性がある
退去時に高額な費用を請求される可能性があるのも、デメリットのひとつです。
敷金という名目でなくても、保証料やルームクリーニング代と称して費用を請求されないとも限りません。契約の際は、退去時に関する条文にもしっかり目を通しましょう。
入居者の入れ替わりやトラブルが多い可能性がある
入居者の入れ替わりやトラブルが多い可能性もあります。いわゆる「訳あり物件」は、主に次の3つです。
- 環境的瑕疵物件:付近に火葬場や墓地・暴力団事務所などがある
- 法的瑕疵物件:建築基準法に違反している・再建築不可地域など法律的な問題がある
- 心理的瑕疵物件:過去に孤独死や殺人・自殺があった
家主は、このような物件が長い間、空き室・空き家になれば、経年劣化による修繕費の負担に加えて家賃収入を得られなくなります。だから、敷金・礼金を無料にしているのかもしれません。
しかし、貸主や不動産会社には告知義務があり、何らかの瑕疵のある事実を隠蔽した場合は、宅地建物取引業法に違反します。念のため、契約前に確認しておくと安心です。
修繕や細かな対応が遅れる可能性がある
修繕や細やかな対応が遅れる可能性もあります。敷金がなければ、修繕や新たな備品・機器を導入する費用は、貸主が負担しなければなりません。貸す側の立場としては余計なコストをかけたくないため、これらの対応には消極的になるでしょう。
敷金・礼金なし物件を契約する際の注意点
この章では、敷金・礼金なし物件を契約する際の注意点について説明します。知らないで契約すれば、想定外の費用がかかってしまうかもしれません。後悔しないためにも、注意すべき5つのポイントをしっかり押さえておきましょう。
退去時費用の扱いを必ず確認する
契約する際は、退去時費用の扱いを必ず確認しましょう。退去する際の原状回復は、借主に義務付けられています。
敷金がない場合は、退去する時にこの費用を支払わなければなりません。どの程度請求されるかを事前に確認しておけば、後で慌てなくて済みます。
契約時に別名目の費用が発生していないか確認する
契約時に別の名目で費用が発生していないかを確認するのも、大事なポイントです。たとえば、前家賃や仲介手数料・清掃費などの名目で請求されるケースもあります。合算したら敷金と同等の額になる可能性もあるため、注意が必要です。
短期解約違約金の有無など特別な条項を確認
短期解約違約金の有無など、特別な条項も確認しましょう。貸主が敷金・礼金を取らない理由は、なるべく長く住んでもらって空き家・空き室をなくすためです。
特に、1年未満で契約を解除する場合は、家賃約1ヶ月分の違約金が発生する旨が条文に記載されていることがあります。
物件や貸主の方針によって、たとえば、6ヶ月未満の解約で1ヶ月分、2年未満の解約で1ヶ月分の違約金などが設定されるケースもあるようです。署名する前に、契約書を隅々まで熟読しましょう。
物件の管理状況や周辺環境をチェックする
物件の管理状況や周辺環境をチェックするのも、注意すべきポイントです。いざ引っ越してみたら、管理の悪さが原因で床や壁にへこみや大きな傷があったり、備え付けのエアコンやインターホンの動作状況が悪かったりするかもしれません。
また、近くに墓地や柄の悪い暴力団事務所・夜中まで営業する居酒屋があるなどの理由で、敷金・礼金を無料にしている可能性もあります。見学時にチェックして、少しでも気になる点があれば不動産会社に相談しましょう。
保証会社や火災保険の条件を確認する
保証会社や火災保険の条件も確認しておきましょう。賃貸物件では、万が一の事故や家賃の滞納などのトラブルが発生した際に貸主と借主を保護する目的で、保証会社や火災保険への加入が契約条件になっていることが一般的です。
大抵は家賃の半額〜1ヶ月分程度ですが、金額はサービスの詳細や委託する企業によって異なります。どのような時に適用されるのかなどを含め、条件の詳細を必ず確認しましょう。
まとめ
敷金・礼金がなければ、初期費用を抑えられて助かりますが、物件数はそれほど多くありません。
また、ゼロゼロ物件には、家賃が割高に設定されている・退去時に多額の費用を請求される・訳あり物件である・修繕や対応が遅れる可能性もあります。
これから引越しを検討されている方は、契約後に後悔しないよう、ぜひ今回ご紹介したデメリットや注意点を参考にしてください。
執筆年月日:2025年6月
※内容は2025年6月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。
