引っ越しのときに印鑑登録の住所変更手続きは必要?ケース別で解説

数多くの手続きが必要な引っ越し時に、「印鑑登録の住所変更手続きは必要なのだろうか」と迷う人は多いでしょう。印鑑登録の手続きが必要か否かは、引っ越し先や状況によって異なります。
この記事では、印鑑登録の住所変更手続きをケース別で解説するとともに、手続きの方法や印鑑登録に関するよくある質問についても紹介します。
印鑑登録とは?
印鑑登録とは、住民票がある市区町村の役所に、自分の印鑑を登録する手続きです。登録した印鑑は「実印」と呼び、登録者の氏名や住所などの情報と紐づけられます。
実印は、証拠能力が高いため、本人であることをより確実に証明する際に使用します。たとえば、不動産や自動車の購入・売却、住宅ローンの契約、遺産相続といった、重要な契約や手続きなどです。
個人の場合、印鑑登録は必須の手続きではありません。使用する予定がない場合は、無理に登録する必要はないでしょう。
印鑑登録は、満15歳以上および意思能力を有する人が行えます。原則として、意思能力を有しない人は登録ができません。ただし、成年被後見人であっても、法定代理人(成年後見人)が同行した場合には、印鑑登録の手続きが可能な場合もあります。
印鑑証明書とは?
印鑑証明書(正式名称は印鑑登録証明書)とは、書類などに押印した印鑑が実印であることを証明する、公的な書類です。印鑑証明書には、登録印の印影や氏名、生年月日、住所などが記載されています。
重要な契約や手続きでは、実印の押印とともに、その印鑑が実印であることを証明する印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。
印鑑証明書は、各役所の窓口や出張所、市役所サービス・コーナーなどで発行ができます。印鑑証明書の交付申請には、「印鑑登録証」が必要です。印鑑登録証とは、印鑑登録の手続き時に発行されるカード型の書類で、印鑑登録カードとも呼ばれます。印鑑証明書の発行に欠かせないもののため、大切に保管してください。
コンビニエンスストアで取得できるサービス「コンビニ交付」を利用する場合、印鑑登録証は不要です。ただし、マイナンバーカードまたはスマートフォン(スマートフォン用の電子証明書を搭載済み)が必要となります。
印鑑証明書は、取り方や自治体によって規定が異なるため、事前に確認をしてください。
引っ越しをするときは印鑑登録の手続きが必要?
引っ越しに伴う印鑑登録の手続きは、引っ越し先によって異なります。ここでは、「今の住所と同じ市区町村内での引っ越し」と「今の住所から別の市区町村への引っ越し」、2つのケースについて詳しく解説します。
今の住所と同じ市区町村内で引っ越しする場合
今の住所と同じ市区町村内で引っ越しする場合、印鑑登録の手続きは基本的に不要です。なぜなら、役所に転居届を提出することによって、印鑑登録の住所も自動的に更新されるからです。印鑑登録についての新たな手続きは必要なく、手元にある印鑑登録証もそのまま使用できます。
ただし、東京都の特別区や政令指定都市などでは、同じ市区町村内の引っ越しでも、印鑑登録の手続きが必要になるケースもあります。自治体によって規定の詳細が異なることもあるため、事前に役所の窓口やホームページで確認しておきましょう。
「引っ越しを機に実印を変えたい」「引っ越し時に印鑑登録証を紛失した」といった場合には、現在の印鑑登録を廃止し、新たに登録手続きを行ってください。
今の住所と別の市区町村へ引っ越しする場合
今の住所から別の市区町村へ引っ越しする場合、引っ越し先の役所で新たに印鑑登録の手続きが必要です。これは転出届を提出することにより、印鑑登録は自動的に廃止されるからです。
転出予定日の前日までは、印鑑証明書の発行ができます。転出予定日を過ぎている場合には、転出届の取消を行うことで印鑑証明書の発行が可能です。転居後、旧住所が記載された印鑑証明書を使用することはできません。
印鑑登録が廃止されると、手元にある印鑑登録証も使用できなくなります。役所に返還するか、自分で破棄してください。効力は失っているものの、印鑑登録証は公的な書類です。自分で破棄する場合は、裁断するなど安全な方法で処分しましょう。
印鑑登録の手続き方法
印鑑登録の手続きは、お住まいの役所で行います。手続きに必要なものや流れについて確認しておきましょう。
印鑑登録の手続きで必要なもの
印鑑登録の手続きをする際には、以下のものが必要です。
- 登録したい印鑑
- 本人確認書類
本人確認書類は、運転免許証やパスポート、マイナンバーカード(個人番号カード)など、官公署が発行する顔写真付きの公的な身分証明書が一般的です。
印鑑登録の手続きは、代理人による申請も可能です。本人による手続きとは必要なものが異なるため注意してください。代理人による印鑑登録の手続きは自治体によって異なりますが、主に以下のものが必要です。
- 登録したい印鑑
- 登録者の本人確認書類
- 登録者本人が作成した委任状(委任通知書)
- 代理人の本人確認書類
- 代理人の印鑑
印鑑登録は、重要な契約や手続きにおいて、本人確認の役割を果たす非常に重要なものです。不正を防止するため、代理人による申請はより慎重に行う必要があり、手続きに必要なものも多くなる傾向にあります。
印鑑登録手続きの流れ
印鑑登録手続きの流れは、申請するのが本人か代理人かによって異なります。事前に流れを把握しておくと、手続きがスムーズに行えます。
【本人が申請する場合】
本人が申請する場合、公的な身分証明書(顔写真付き)の有無によって手続きの流れが異なります。
公的な身分証明書(顔写真付き)がある場合、お住まいの役所へ行き、本人確認書類と印鑑登録申請書を提出します。申請日当日にすべての手続きが完了し、その日のうちに印鑑証明書の交付申請をすることも可能です。
公的な身分証明書(顔写真付き)がない場合は、「保証人方式」による手続きが行えます。保証人方式とは、同市町村で印鑑登録をしている人に、保証人になってもらう方法です。この場合も、申請日当日にすべての手続きが完了します。
公的な身分証明書(顔写真付き)がなく、保証人もいない場合は、「照会書方式」による手続きとなります。照会書が郵送され、回答書を提出することで登録を行う方法です。手続きが完了するまで日数を要します。
【代理人が申請する場合】
代理人が申請する場合は、「照会書方式」で行うのが一般的です。代理人は、登録者が住む役所の窓口へ出向き、申請手続きを行います。申請手続き終了後、登録者本人の意思を確認するため、本人の住所へ照会書(回答書)が郵送されます。
届いた照会書は、登録者本人による記入押印が必要です。照会書にある回答欄には、本人の氏名・住所・生年月日の記入および押印、代理人欄へは代理人の氏名と住所を記入してください。
代理人は、再度窓口へ出向き、記入済みの照会書と代理人の本人確認書類、印鑑などを提出します。登録申請の事実が確認できた場合のみ、印鑑登録および印鑑登録証が交付されます。
代理人が申請する場合、窓口に少なくとも2回出向く必要があり、手続きも複雑です。登録完了までに時間がかかることを覚えておきましょう。
印鑑登録は、本人の意思に基づいて行われる重要な手続きです。特別な事情がない限り、本人が申請することをおすすめします。
印鑑登録に関するよくある質問
実印は、重要な契約や手続きで使用するものです。日常生活において、実印を利用する機会は少ないため、印鑑登録に馴染みが薄い人も多いでしょう。ここでは、印鑑登録に関するよくある質問をまとめました。
申請時に顔写真付きの証明書がなくても大丈夫?
申請時に顔写真付きの証明書がない場合でも、印鑑登録の手続きは可能です。ただし、前述したとおり、保証人を立てたり、郵便による照会が必要だったりと、手続きは複雑になる場合があります。発行までに時間がかかるケースもあるため、余裕を持って申請をしましょう。
登録した印鑑登録は廃止・抹消できる?
登録した印鑑登録は、登録者の意思によって廃止・抹消できます。印鑑登録の廃止を希望する場合は、印鑑登録廃止申請の届出が必要です。届出が受理されると、現在の印鑑登録は廃止されます。
印鑑や印鑑登録証を紛失した場合には、第三者に悪用される恐れがあります。登録している役所に、印鑑登録証亡失届や登録印鑑亡失届を提出し、印鑑登録を廃止してください。
印鑑登録で使用する印鑑には決まりがある?
印鑑登録で使用する印鑑には決まりがあります。自治体によって条件は異なりますが、印鑑登録で使用できる印鑑の主な条件は以下のとおりです。
- 住民基本台帳に登録されている氏名(氏もしくは名)を表わしているもの
- 印鑑の印影が最低8mm四方に収まらないもの、最大25mm四方に収まるもの
ゴム印のような変形しやすい印鑑は使えません。印影が不鮮明だったり、輪郭が欠けていたりする印鑑も登録不可です。大量生産されている印鑑は、悪用される恐れがあるため、印鑑登録に適しません。
市区町村によって規定が異なる場合もあります。印鑑登録で使用できる印鑑かどうかは、お住まいの役所に確認してください。
印鑑登録手続きの期限は?
印鑑登録の手続きは義務ではないため、手続きの期限は定められていません。いつでも手続きを行えます。
特に期限はないものの、不動産取り引きや自動車登録などで印鑑証明書が必要になったときに焦ることがないよう、早めに登録を済ませておくと良いでしょう。引っ越し時の各種手続きと一緒に行うとスムーズです。
まとめ
引っ越しにともなう印鑑登録の住所変更手続きは、引っ越し先が同じ市区町村内の場合は不要、別の市区町村の場合は新たな登録手続きが必要です。申請者や公的な身分証明書(顔写真付き)の有無によって手続き方法は異なるため、必ずお住まいの役所に確認しましょう。
引っ越しに伴うさまざまな手続きの中で、実印が必要になる場合もあります。印鑑登録の流れを確認し、必要なものを揃えておきましょう。
執筆年月日:2024年12月
※内容は2024年12月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。