引越し時に本籍は変更すべき?変更のメリット・デメリットを紹介
引越しをすると住所は変わりますが、住所のほかにも「本籍も一緒に変えるべき?」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、本籍・本籍地変更のメリット・デメリットや変更手続きなどについて詳しく紹介します。本籍を変えるべきかお悩みの方はぜひ参考にしてください。
そもそも戸籍謄本(本籍)とは
法務省ホームページによると、戸籍制度について以下のように説明されています。
“戸籍は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度です。”
引用:戸籍(法務省)
戸籍謄本とは、戸籍の全員の身分事項について記載されている証明のことです。一部の人のみが記載されたものは戸籍抄本といいます。
"戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)には、「本籍」と「戸籍の筆頭者の氏名」、その戸籍に記載されている人全員の、「氏名」、「生年月日」、「父母の氏名と続柄」とそれぞれの人に関する「出生事項」「婚姻事項」などの身分事項が記載されます。"
引用:戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)にはどんなことが載っているのですか。戸籍個人事項証明書とはどう違うのですか。(FAQID-2246~2249・2289) - よくある質問と回答(広島市公式ホームページ)
本籍とは、戸籍のある場所のことを指します。本籍は住民票がある場所に限らず、日本国内の地番のある場所ならどこにでも置くことができます。そのため、引越し時に必ず変更しなければならないものではありません。
また、本籍と同じ意味で「本籍地」が使われることがありますが、「本籍地」は戸籍を管理する市区町村のことを指すため、本籍と「本籍地」は厳密には異なります。一般的には同じ意味で使われることも多いですが、本来の意味の違いは覚えておくとよいでしょう。
“「本籍」は、都道府県名、市区町村名(町村の場合は郡名も)、町(丁)字名、地番で表示されます。本籍の表示には、アパートやマンション等の名称や部屋番号は入りません。「本籍」は、戸籍謄(抄)本の先頭に表示されています。
また、戸籍簿を管理している市区町村を「本籍地」といいます。本籍地は必ずしも住民登録地と同一とは限りません。”
本籍地を変更するタイミング
本籍・本籍地を変更するタイミングの主な例としては、「結婚」「離婚」「住宅購入」などがあります。
結婚して夫婦になると、親の戸籍を抜けて新たに夫婦で一つの戸籍に入ります。離婚のときは、筆頭者(戸籍のいちばん最初の人)でない配偶者の場合、「結婚前の戸籍に戻る」か「自分が筆頭者となり新たに戸籍をつくる」かいずれかを選択することになります。戸籍が変わる結婚や離婚は、本籍を変更するタイミングの一つといえるでしょう。
ほかにも、住宅購入の際にマイホームの場所を本籍にするというケースもあります。本籍をマイホームと同じ場所にしておくことで、将来的にも本籍の場所を忘れてしまうリスクが減るかもしれません。
戸籍謄本(本籍)が必要になるタイミング
公的書類の申請や、生命保険や年金の請求など、戸籍謄本が必要になるタイミングはさまざまです。具体的な例として、以下のようなときに必要になる可能性があります。
公的書類の申請や、生命保険や年金の請求など、戸籍謄本が必要になるタイミングはさまざまです。具体的な例として、以下のようなときに必要になる可能性があります。
- パスポートの申請
- 生命保険の請求
- 年金の請求
- 相続手続き
- 公正証書遺言の作成
いざ必要となったときに備えて、戸籍謄本の取得方法などをしっかり確認しておくと安心です。
戸籍謄本(本籍)の確認・取得
戸籍謄本を取得する際は、本籍がわからないと手続きができません。本籍がわからない場合、本籍記載の住民票を取得するか、運転免許証のICチップの記録から確認できます。運転免許証のICチップは、運転免許センターや警察署に設置されている端末で読み込むことが可能です。
戸籍謄本の取得は、役所の窓口やコンビニで行えます。以前は本籍地の役所の窓口でないと取得できませんでしたが、2024年3月1日より戸籍証明書の「広域交付」が開始され、全国どこの市区町村の窓口でも取得できるようになりました。ただし、コンピュータ化されていない一部の戸籍や除籍など、取得できないものもあるので注意してください。
“本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになります(広域交付)。
これによって、
【どこでも】
本籍地が遠くにある方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で請求できます。
【まとめて】
ほしい戸籍の本籍地が全国各地にあっても、1か所の市区町村の窓口でまとめて請求できます。”
引用:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)(法務省)
戸籍謄本は、マイナンバーカードを使ってコンビニの交付機で取得することも可能です。住んでいる市区町村と本籍地の市区町村が異なる場合も、事前に利用登録申請を行えば取得できます。ただし、本籍地の自治体がコンビニ交付に対応していない場合は取得できないため、注意が必要です。
本籍地を変更するメリット
本籍・本籍地を変更することでどのようなメリットがあるのでしょうか。本籍・本籍地変更のメリットを具体的に紹介します。
戸籍謄本を取得しやすくなる
本籍地を現住所と同じ市区町村に変更しておくことで、戸籍謄本を取得しやすくなるメリットがあります。
先述のとおり、2024年3月から全国どこの役所の窓口でも戸籍謄本を取得できるようになりました。しかし、本籍地と違う役所の窓口に申請すると、システムの状況や確認作業などの関係で、交付に長時間かかる場合や当日の交付ができない場合もあるようです。
本籍地は現住所と同じ場所にしておくほうが、スムーズに戸籍謄本の取得手続きを進められるでしょう。
新しい戸籍に離婚の記録がつかない
離婚すると、筆頭者と除籍された人それぞれの戸籍に、離婚についての記録が載ります。しかし、その後に新しい戸籍をつくり本籍を変更した場合、新しい戸籍には離婚したときの記録が記載されません。離婚についての記載が気になる方にとってはメリットといえるでしょう。ただし、以前の戸籍に記載された離婚の記録が消えるわけではないため、気をつけてください。
本籍地を変更するデメリット
本籍・本籍地の変更にはデメリットもあります。デメリットを考慮したうえで、変更するかどうかを慎重に判断しましょう。
運転免許証・パスポートなどの変更手続きが必要になる
本籍を変更すると、本籍を登録している公的書類の変更手続きも行わなければならなくなります。運転免許証やパスポートがその代表例です。
また、医師・看護師・助産師など、本籍の情報を登録している国家資格についても、変更手続きが必要となります。
本籍の変更にともなって手続きが増えることは、デメリットの一つといえるでしょう。
遺産相続の際に取り寄せる戸籍・除籍謄本が増える
遺産相続の際は、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本や除籍謄本が必要になります。除籍謄本とは、戸籍に記載されている人全員が結婚、転籍、死亡などで除籍となっている証明のことです。本籍を変更すると、遺産相続の際に相続人が取り寄せなければならない戸籍・除籍謄本が増えてしまいます。
以前は本籍地の市区町村ごとに戸籍・除籍謄本を取得しなければなりませんでしたが、現在は先述のように本籍地以外の市区町村の窓口で取得することもできるようになりました。しかし、本籍地ではない役所の窓口に請求した場合、交付に時間がかかることもあります。本籍・本籍地を変更すると、相続時の手間が増える可能性があることを理解しておきましょう。
本籍地を変更する
本籍・本籍地の変更は、「転籍」「分籍」「結婚」「離婚」のいずれのケースに当てはまるかで手続きが変わります。この章では、各ケースごとの手続きについて詳しく説明します。
転籍する場合
転籍は、戸籍に記載がある人全員の本籍を変更するものです。役所に「転籍届」を提出して手続きをします。
転籍届の届出人は、筆頭者・配偶者となり、両方の署名が必要になります。
届出先は、「現在の本籍地」「新しい本籍地」「届出人の所在地」のいずれかの役所の窓口です。
分籍する場合
戸籍の全員ではなく、一部の人のみが本籍を変えたい場合は分籍となります。役所に「分籍届」を提出し手続きをします。
分籍の手続きができるのは、筆頭者・配偶者以外の18歳以上の人です。夫婦が別々の場所を本籍にすることはできません。また、分籍をしても親子関係などに変更はありません。
分籍届の提出先は、転籍届と同様に「現在の本籍地」「新しい本籍地」「届出人の所在地」のいずれかの市区町村の役所の窓口となります。
なお、一度分籍をすると分籍前の戸籍には戻れません。分籍を検討する際は、もとの戸籍に戻れないということを理解したうえで判断しましょう。
結婚する場合
結婚すると、夫婦どちらか一方の氏を選択して同じ氏となり、新しく夫婦2人の戸籍ができます。新本籍となるのは、婚姻届にある「新本籍」の記載欄に記入した本籍です。婚姻届が受理されると、記入した本籍が自動的に住民票に反映されます。そのため、結婚のときに本籍を変更する場合は別途手続きを行う必要はありません。
離婚する場合
離婚すると、戸籍の筆頭者・配偶者のうちの配偶者が除籍となります。除籍となった人は「結婚前の戸籍に戻る」か「新しい戸籍をつくる」かのどちらかを選択します。離婚届に「婚姻前の氏に戻るものの本籍」欄があるので、「もとの戸籍にもどる」か「新しい戸籍をつくる」のどちらか希望するほうにチェックをし、本籍にしたい場所を記入してください。
離婚した際に除籍となるのは配偶者のみで、筆頭者と子どもの本籍は変わりません。子どもの本籍を除籍された人の戸籍に入れるためには、まず家庭裁判所で「子の氏の変更許可の申立て」をおこなう必要があります。家庭裁判所の許可を得たら、役所に子どもの「入籍届」を提出しましょう。届出先は、「入籍する子の本籍地」「入籍先の親の本籍地」「所在地(住所地)」のいずれかの市区町村の役所窓口です。なお、申立人は子が15歳以上の場合は子本人、子が15歳未満の場合は親権者となります。
“子の戸籍を移動するには,家庭裁判所の許可を得た後に,市区町村役場に届出をすることが必要になりますので,子の本籍地又は届出人の住所地の役場に入籍の届出をしてください。届出にあたっては,審判書謄本のほか,戸籍謄本(全部事項証明書)などの提出を求められることがありますので,詳しくは届出する役場にお問い合わせください。”
まとめ
引越し時の本籍・本籍地変更は必須ではありません。本籍地を現住所と同じ場所に変更することで、戸籍謄本が取りやすいなどのメリットがありますが、変更によるデメリットもあります。メリット・デメリットを理解したうえで、本籍・本籍地を変更するか検討するとよいでしょう。
執筆年月日:2024年9月
※内容は2024年9月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。