網入りガラスの熱割れの原因は?熱割れを防ぐための対策方法も解説

網入りガラスとは、ガラスの内部に網目状のワイヤーが埋め込まれた特殊なガラスのことです。強度が強そうに見えるものの、熱割れを起こしやすい特性があります。
本記事では、網入りガラスにおける熱割れの原因をわかりやすく解説するとともに、万が一熱割れが発生した場合の適切な対処法や、熱割れを未然に防ぐための対策方法についても詳しくご紹介します。
網入りガラスとは?
網入りガラスとは、ガラス内部にワイヤーが埋め込まれた防火性能の高いガラスです。破損時に飛散しにくい特徴があり、防火地域や準防火地域での使用が義務付けられる場合があります。
ワイヤーの形状には、格子状の「クロスワイヤー」や菱形模様の「ヒシワイヤー」などがあり、用途や見た目に応じて選ばれることが多いです。その安全性と機能性から、住宅や商業施設、防火が求められる施設で広く利用されています。さらに、防火対策のみでなく、建物の安全性を高める役割も果たしています。
ガラスの熱割れとは?
ガラスの熱割れとは、ガラスの中心部と周辺部に生じる温度差によって、ガラスが割れてしまう現象です。直射日光で温まった部分と、温度が変わらないサッシ周辺部分との間に温度差が生じることで、ガラスが膨張に耐えられなくなり割れてしまいます。この現象は、冷たいコップに熱湯を注ぐと割れるのと同じ原理です。
熱割れによるヒビは、ガラスの端に対して直角に入り、蛇行しながら広がるのが特徴です。温度差がさらに大きい場合、ヒビが複数に分岐することもあります。
網入りガラスが熱割れしやすい理由
網入りガラスが熱割れしやすい理由は、まず衝撃に対する強度が低いことです。網入りガラスは通常の透明ガラスと同程度の強度しかなく、ガラスが膨張してヒビが入ると耐えきれずに割れてしまいます。
次に挙げられるのは、内部の金属製ワイヤーが熱を吸収しやすい点です。ワイヤーが熱をため込みやすいため、ガラスとサッシの間に温度差が生じやすく、その結果、熱割れが発生しやすくなります。
網入りガラスが熱割れする主な原因
すでに熱割れが起きている場合は、原因として考えられる要素に該当するものがないか確認してみましょう。熱割れが発生する原因を正しく理解することで、効果的な再発防止策が講じられます。ここでは、網入りガラスの熱割れの原因について詳しく解説します。
ガラスの温度上昇と温度差
窓ガラスは直射日光が当たる部分と日陰の部分で温度差が生じ、これが熱割れの原因となります。家の中でも、天窓などは特に直射日光が当たりやすく、熱割れが生じやすいです。また、窓付近に家具や洗濯物があると日陰ができ、温度差が大きくなります。エアコンの風も温度差の原因になり危険です。
網入りガラスは、ワイヤー部分が熱を吸収して高温になるため、サッシ部分との温度差が生じやすい特徴を持っています。この温度差の加速が、ガラスが膨張し破損する原因になります。
ガラスに付着した水分や塩分
結露した網入りガラスを放置すると、熱割れのリスクが高まります。水分が付着すると、ワイヤー部分が錆びて耐久性が低下するためです。
また、海沿いの地域では塩害にも注意が必要です。潮風に含まれる塩化ナトリウムがガラスに付着すると白濁が生じ、ガラスの劣化を引き起こします。
特に風を受けやすい高層ビルでは、潮風により運ばれる塩分がガラスに付着しやすいです。長期間放置すると塩害の進行が加速し、ガラスが傷ついたり白濁したりします。このため、ワイヤー入りガラスは定期的な掃除とメンテナンスが不可欠です。
経年劣化
窓ガラスは、風や雨、日光といった自然環境にさらされることで徐々に劣化していきます。一般的に窓ガラスの寿命は20〜30年と言われていますが、10年以上経過すると耐久力が弱まり、熱割れのリスクが高まることがあります。
窓ガラスのほかにも、ガラスとサッシをつなぐ「グレージングチャンネル(ゴムパッキン)」も経年劣化に注意が必要です。このパッキンは歪みを吸収して熱割れを防ぎますが、紫外線や雨風にさらされると弾力性が失われ、機能が低下します。
また、設置時の不具合や小さな傷も、劣化が進むとヒビ割れの原因になることがあります。古い網入りガラスは、ゴムパッキンも含めて早めに交換や修理を検討しましょう。
熱割れが起きたときの応急処置
網入りガラスが熱割れを起こした場合は、早急な応急処置が重要です。ヒビを放置すると、ガラスの強度が著しく低下し、わずかな衝撃でも大きく割れてしまう危険性があります。ヒビが小さい場合は、ヒビ部分にガムテープや布テープを貼って補強しましょう。内側と外側の両面をしっかり補修すると、割れの進行を防げます。
ヒビが大きい場合は、ガラスに段ボールを被せた上からテープで固定すると効果的です。ただし、ガラスが脆くなっているため、作業中は割れを広げないよう慎重に行う必要があります。
なお、ガムテープは水に弱いため、布テープや養生テープ、もしくはガラス専用の補修テープを使用するのが望ましいです。また、コーキング剤やリペアキットを使う方法もありますが、すぐに準備が難しい場合は、身近にあるものでできる限り早く対応しましょう。
熱割れしたガラスの交換費用
窓ガラスが熱割れした際、交換費用はどのくらいかかるのでしょうか。また、賃貸住宅の場合は誰が交換費用を負担するのでしょうか。交換にかかる費用や、賃貸における費用負担について、次に詳しく解説します。
賃貸の場合に交換費用を負担するのは誰?
賃貸住宅に住んでいる場合、自分で業者に依頼して窓ガラスを交換する必要はありません。窓ガラスの熱割れが経年劣化による自然な割れである場合、借家人(入居者)の故意や過失ではないため、交換費用は貸主が負担することになります。
熱割れで窓ガラスが割れたら、まず貸主または管理会社に連絡し、業者に対応を依頼してもらいましょう。万が一対応が遅れる場合は、早めの再連絡で対応を促すことも大切です。
火災保険が適用されることもある
火災保険に加入していれば、熱割れが「建物や家財に対する不測かつ突発的な事故」とみなされ、保険金が支払われることがあります。ただし、熱割れが火災保険の適用範囲であっても、免責金額が交換費用よりも高い場合は保険金を受け取れません。契約内容を確認し、免責金額がいくらに設定されているかを把握しておくことが大切です。
熱割れが過失にあたる場合でも、プランやオプション次第では補償対象となることもあります。一方で、予測可能な現象と見なされ、補償の対象外となることも少なくありません。熱割れは温度差が徐々に広がることで発生するため、予測可能と判断されるケースがあるためです。この場合も、火災保険の補償範囲を事前に確認しておくことが大切です。
網入りガラスの交換費用相場
網入りガラスの交換費用は、新設するガラスの種類やサイズによって異なります。おおよその価格帯は以下の通りです。
- 通常の透明網入りガラス(90×90cm):10,500~20,000円
- 半透明型板ガラス(90×90cm):5,000~20,000円
- 複層ペアガラス(90×90cm):25,000~40,000円
交換作業にかかる追加費用としては、以下が一般的です。
- 交換作業費:10,000~20,000円
- サッシ交換(必要な場合):20,000~50,000円
また、出張費や廃材処分費が加算される場合があり、交換にかかる総額は通常50,000~100,000円程度になります。
ガラスの熱割れを防ぐための対策方法
網入りガラスは熱割れが起こりやすいですが、事前の適切な対策でリスクを軽減することが可能です。次に、網入りガラスの熱割れを防ぐための方法について詳しく解説します。
窓ガラスの近くに家具や物を置かない
窓ガラスの近くに家具や物を置くと、太陽の熱を吸収して窓ガラスに熱がこもりやすくなります。特に色の濃い物は熱を集めやすいため、注意が必要です。窓際に洗濯物をかけるのも避けましょう。
また、カーテンやブラインドにも注意が必要です。カーテンが窓ガラスに触れていると局所的に過熱され、温度差が大きくなります。特に遮光カーテンは熱を溜め込みやすいため、窓から距離をとるようにするか、交換を検討しましょう。
冷暖房や室外機の風がガラスに当たらないようにする
冷暖房の風が窓ガラスに直接当たると、熱割れのリスクが高まります。エアコンの風向きを調整して風が直接ガラスに当たらないようにしましょう。扇風機やストーブを窓際に設置している場合も、位置や風向きに注意が必要です。
また、室外機から出る熱風にも注意が必要です。特にベランダに設置された室外機が横向きに配置されている場合、熱風が窓ガラスに当たりやすくなります。室外機から出る熱風が窓ガラスに当たらないよう、少し離して配置する工夫をしましょう。
断熱シートをガラスに貼らない
網入りガラスに断熱シートやフィルムを貼るのは、ガラスに熱がこもりやすくなり熱割れのリスクが増すため、避けるべきです。室内の温度調整には役立つものの、熱割れの予防にはシートを貼らないことが大切です。
断熱シートのほかにも、色付きシートや結露防止シート、遮熱防止シート、飛散防止シートも使用を避けましょう。どうしても使用したい場合は、網入りガラスに適したものを選ぶのがおすすめです。
定期的な窓拭き掃除を行う
秋口や初冬など、寒暖差が大きくなる時期には、窓の結露が頻繁に発生します。網入りガラスの場合、結露の放置は内部のワイヤーが錆びる原因になりかねません。さらに、ガラスの劣化や割れの原因にもなるため、定期的に拭き取ることをおすすめします。日常的な掃除でガラスを長持ちさせることができ、熱割れ防止につながります。
まとめ
網入りガラスはワイヤー入りで防火性が高く、破片の飛散を防ぎます。しかし、熱をため込みやすく、温度差による熱割れが発生しやすいという特性もあります。熱割れが発生した場合は、迅速に応急処置を施し、ガラスの交換を行うことが大切です。定期的なメンテナンスとチェックで網入りガラスの耐久性を保ち、熱割れのリスクを軽減できるでしょう。
執筆年月日:2025年1月