強化ガラスが割れる原因は?割れ方の特徴や割らないための対策を紹介

強化ガラスと聞くと、一般的に耐久性が高く、強いガラスを思い浮かべることが多いでしょう。強化ガラスは名前の通り高い強度を持つガラスですが、完全に割れないわけではありません。
本記事では、強化ガラスが割れる原因や割れ方の特徴、割らないための対策を紹介します。強化ガラスを長く安全に使用するための参考にしてください。
強化ガラスとは
特別な加工を施して製造されている強化ガラスは、一般的なガラスと比較して強度や耐熱性に優れた構造です。見た目は一般的なガラスと変わりませんが、製造工程に違いがあります。
強化ガラスは一般的な透明ガラスを650℃まで加熱したあと、冷風をかけて冷やします。その工程で、ガラス表面には圧縮応力層、内面には引張応力層が生じ、強度が強くなる仕組みです。強化ガラスの強度は一般のガラスの3~5倍あり、耐熱温度は150~200℃です。しかし、強化ガラスは耐熱用として製造されているものではないため、耐熱目的での使用は避けましょう。
強化ガラスの割れ方には特徴がある
強度や耐熱性に優れた強化ガラスは、軽く物がぶつかる程度では割れませんが、特定の条件や強い衝撃により割れることがあります。ここでは、強化ガラスの割れ方についてくわしく解説します。
「安全ガラス」と呼ばれている
強化ガラスは一般的な透明ガラスと同じ厚みの場合、強度が3.5倍になります。住宅用のほか、安全性が重視される学校などの公共施設が主な設置場所です。
強化ガラスは小さな粒状に割れる特徴があり、普通のガラスよりもけがをしにくいため、別名「安全ガラス」と呼ばれています。なお、自動車のフロントガラスなどに使用されている「合わせガラス」も安全ガラスと呼ばれています。
ガラス全体が粉砕する
強化ガラスは割れる際、ガラス全体にひびが入り粉々になって砕けます。砕けたガラスは粒状になるため、一般的なガラスの破片と比較し鋭利になりにくく、負傷するリスクが少ない特徴を持っています。さらに、窓枠に破片が残りにくく、後処理が簡単です。
一方、一般的なガラスは、衝撃点を中心として亀裂が放射線状に広がるため、窓枠に破片が残ることがあります。窓枠に残った破片は後から落下し負傷する可能性があるため、後処理を行う際は怪我をしないよう注意が必要です。
強化ガラスが割れる原因
強化ガラスは一般的なガラスよりも耐久性が高く、多少の衝撃では割れないとされていますが、場合によっては割れることがあります。ここでは、強化ガラスが割れる主な原因を紹介します。
傷やひび
強化ガラスに傷やひびが入っても、すぐに割れるわけではありません。気付かないような小さな傷やひびが内部の層まで達すると耐久性が著しく低下し、割れることがあります。一定の時間が経過して突然割れるため、予測が難しく危険を伴うことがあります。
小さな傷やひびが大きな破損につながることがあるため、見つけた場合は早急に対処することが重要です。
ガスバーナーなどで一点集中された熱
強化ガラスは面の衝撃に強く、点の衝撃に弱いのが特徴です。耐熱性の高さを誇る強化ガラスですが、熱が一点に集中するとガラス内部に負荷が生じ、割れることがあります。特に、ガスバーナーなどで局所的に強い熱が加わると、急激な温度変化によりひびが入り、破損するリスクが高くなります。
空き巣が使う手口に「焼き破り」があり、これはガラスに熱衝撃を加えて窓を割る手段です。強化ガラスは一般的なガラスよりも耐熱性が高いものの、極端な温度変化には耐えられません。そのため、防犯目的に使用するには注意が必要です。
急激な気温差
非耐熱のコップに熱湯を入れると、ひびが入ったり割れたりするのを見たことがある人は多いかもしれません。この現象は、強化ガラスにも発生します。強化ガラスは急激な気温差に弱く、ガラス全体の温度差によって発生するのが「熱割れ」と呼ばれる現象です。
例えば、冬場の夜間に冷やされたガラスが、朝の直射日光や暖房の風を受けると、暖まった部分と冷えている部分に急激な温度差が生じます。この温度差が原因でガラスが割れるリスクが高まります。そのため、夏や冬など室内外の気温差が大きくなる時期は特に注意が必要です。
自然破損
強化ガラスは自然に割れてしまう場合が稀にあり、これを自然破損と呼びます。製造過程でガラス内部に不純物が混入することが原因です。
ガラスに混入しがちな異物のひとつに、硫化ニッケルがあります。硫化ニッケルは環境の変化を受けて体積が変化する性質です。物質の体積変化は、強化ガラス内が傷つく原因となり、内部の応力バランスが崩れてガラスが割れることがあります。
なお、自然破損のリスクを軽減する製造工程に「ヒートソーク処理」があり、出荷前の強化ガラスに熱を加えて経過を観察します。この処理を施すと、異物が混入したガラスはおのずと破損するため、流通後の自然破損を回避できます。しかし、すべての強化ガラスにこの処理が施されているわけではありません。購入や交換時に確認すると安心です。
小口への衝撃
強化ガラスを切断した断面を「小口」と呼びます。強化ガラスは面への衝撃には強いですが、小口に衝撃が加わると非常に脆く、ガラス内部の力のバランスが崩れ、簡単に割れてしまうのです。あらかじめ小口を保護するなど、対策を講じておくことが重要です。
強化ガラスを割らないための対策
一般的なガラスに比べて安全な割れ方をする強化ガラスですが、できる限り割れるリスクを減らしたいものです。ここでは、強化ガラスを割らないための対策を紹介します。
窓拭きの際にクレンザーは使用しない
強化ガラスの窓を掃除する場合、クレンザーの使用は避けましょう。クレンザーには研磨剤が含まれており、強化ガラスの表面を傷つける原因となります。小さな傷でも、強化ガラスの強度を低下させ、割れるリスクを高めてしまう恐れがあるため注意が必要です。
ガラスを傷つけないためには、ぬるま湯につけた柔らかい布を使用し、優しく拭きます。洗剤を使う場合は専用のガラスクリーナーを使用すると安心です。ガラスに負担がかからないよう、こすらず優しく拭くのがポイントです。
保護シートを貼る
強化ガラスは割れにくい構造ですが、強い衝撃や小口への衝撃が加わった場合、割れることがあります。そのため、飛散を防止する保護シートの使用は、効果的な方法です。シートを貼っておくと、万が一ガラスが割れた場合も、ガラスの飛散が防止できます。
窓ガラス用の飛散防止シートには、目隠し効果や遮熱効果をもつタイプもあり、目的に応じて選択できます。これらのシートの使用で、快適な室内環境を保てるでしょう。
強化ガラスが割れた場合の対応
強化ガラスが割れてしまった場合、焦らずに対応することが重要です。特に子どもや高齢者、ペットなどがいる場所では、割れたガラスの破片が危険を及ばさないよう、落ち着いて対応しましょう。ここでは、強化ガラスが破損した場合の対処方法を説明します。
応急処置を行う
最初にできる応急処置は、割れたガラスから人やペットを遠ざけ、別の場所に移動させることです。強化ガラスは割れると粉々に砕ける特徴があり、目に見えない細かい破片が思わぬところまで飛び散っている可能性があるためです。
続いて、以下の方法で応急処置を行いましょう。
- 軍手やスリッパ、靴を装着し、処理をする人の安全を守る
- ほうきや粘着テープを使用し、大きな破片を集める
- 衣類やじゅうたんの上に落ちた小さな破片は粘着ローラーで集める
- 集めた破片を新聞紙に包みダンボールに入れる
破片の回収が完了したら安全な場所に移動させます。割れた部分をダンボールで覆い、ガムテープでしっかりと固定しておきましょう。
専門業者に交換を依頼する
応急処置が完了したら、専門業者にガラスの交換を依頼します。割れたガラスは専門業者が回収してくれることがあるため、事前に回収物がある旨を伝えておくと安心です。
交換を依頼する際、交換したい強化ガラスの特徴(厚み・サイズなど)の情報を伝えておくと、業者が在庫の有無を確認しやすく、スムーズに作業が進むでしょう。
強化ガラスの寿命
強化ガラスの寿命は一般的に約30年です。しかし、窓ガラスの場合はサッシや窓枠の種類、使用環境によって寿命に差が出ることがあります。見た目に変化がない場合でも、長年使用する中で経年劣化が進み、突然割れてしまう恐れがあります。強化ガラスの寿命の兆候を知り、適切な交換時期を知っておきましょう。
強化ガラスの交換時期の判断方法
ガラスは見た目に変化を感じにくいため、交換時期の判断が難しいことがあります。交換時期を見逃すと、突然割れてしまうリスクが生じます。強化ガラスの交換時期を見極めるポイントは以下の通りです。
落とせないガラスの曇り
ガラスの手入れを行う中で、白っぽい曇りが落とせなくなったと感じた場合は交換時期のサインかもしれません。ほこりや砂の付着は拭き掃除で落とすことができますが、白っぽい曇りが残る場合はガラスが劣化している可能性があります。
この症状は「ガラス焼け」と呼ばれ、ガラスが劣化して割れやすくなっている可能性があります。早めに業者に交換依頼をしましょう。
ガラスのゆがみ
ガラスのゆがみは比較的気が付きやすい交換のサインです。ガラスにゆがみが生じると、ガラスの入った窓や扉などの動きが不安定になり、開閉に支障をきたすことがあります。ゆがみの原因はゴムパッキンの劣化や、ガラス内の温度差です。
ガラスのゆがみが進行すると、窓や扉の機能性に影響を与えます。ガラスのゆがみを発見したら業者に依頼し、必要な処置を行ってもらいましょう。
細かな傷
ガラスに細かい傷が入ると、その傷の隙間から雨水などの水分が入り込み、サビが発生する可能性があります。サビはガラスが劣化する原因のひとつです。また、サビが発生していなくても、小さな傷があるガラスは本来の耐久性が失われ、衝撃や振動で割れやすくなっています。サビや細かい傷に気が付いたら、割れる前に早めに交換依頼をしましょう。
まとめ
強化ガラスは強度の高い頑丈なガラスですが、完全に割れないわけではありません。強化ガラスが持つ安全性を過信せず、割れないようしっかりと対策し、取り扱いに注意することが大切です。
また、劣化の見極めも重要なポイントです。自身での判断が難しい場合は、業者への相談も検討してみてください。万が一割れてしまった場合は、周囲の安全を確保し適切な処置を行いましょう。
執筆年月日:2025年1月