窓の防音対策|防音ガラスの効果や費用相場を紹介

窓は室内外の音の影響を受けやすく、日常生活の快適さを損なう原因になりがちです。外からの騒音や室内からの音漏れにお悩みの方にとって、窓による防音対策は効果的であり、その中でも「防音ガラス」はおすすめの対策です。
防音ガラスはその名の通り、通常の窓ガラスに比べて音を大幅に遮断することができます。本記事では、防音ガラスの種類や費用相場、防音ガラスの使用を検討する際のポイントについて詳しく解説します。
防音ガラスとは?
防音ガラスは、外部からの騒音を遮断し、室内からの音漏れを抑える効果を持つ特殊なガラスです。もともとはカラオケボックスや学校の音楽室など、大きな音が発生する場所での使用が一般的でしたが、近年では住宅における隣家からの生活音や車、電車の騒音、ペットの鳴き声対策として、一般家庭にも導入されるケースが増えています。
一口に防音ガラスといっても、いくつかの種類が存在し、それぞれに特徴があります。「ガラスを厚くすれば防音できる」と思われがちですが、実際にはガラスの厚さそのものに加えて、構造や使用される素材が音の遮断性能に大きく影響を与えます。
防音対策をより効果的にするためには、各種類の特徴を理解し、用途や環境に合ったものを選ぶことが重要です。
防音ガラス設置で期待できる効果
防音ガラスの設置は、日常生活の中でさまざまなメリットを得られます。主な効果は以下の通りです。
【騒音の低減】
車や電車の音、隣人の生活音、ペットの鳴き声など外からの騒音を大幅に軽減できます。これにより、静かで快適な室内環境を得られるようになります。
【音漏れの防止】
自宅でピアノやギターなどの楽器を演奏する際、音が外に漏れにくく、周囲への迷惑を気にせず趣味や練習に集中することが可能です。
【防犯性の向上】
防音ガラスは通常のガラスよりも割れにくい構造であるため、空き巣侵入などの防犯対策にも役立ちます。
【火災時の安全性の向上】
防音ガラスの一部には、火災が起きた際に火や煙が通過しにくいタイプもあり、耐火性が向上します。
防音ガラスの種類
防音ガラスにはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴と効果を持っています。以下に、代表的な3つの種類をご紹介します。
合わせガラス
合わせガラスは、2枚のガラスの間に特殊な膜を挟み、防音効果や安全性を高めたガラスです。この特殊膜が振動を吸収し、騒音を軽減します。また、紫外線カットや防犯性能を持つ製品もあり、用途に応じてさまざまな種類が選べます。
さらに、ガラスと膜がしっかり接着されているため、万が一破損してもガラス片が飛び散りにくく、安全性にも優れているのが特徴です。防音ガラスの中でも、合わせガラスは幅広い効果を持つため、住宅や商業施設などで多く採用されています。
複層ガラス
複層ガラスは、断熱性向上や結露対策を目的に作られたガラスです。複数のガラス板の間に空気やガスを挟み込んでいます。この構造により、窓部分の断熱性が高まり、結露の発生を抑える効果があります。ただし、一般的な複層ガラスは防音効果がそれほど高くありません。
防音効果が期待できる複層ガラスは「真空ガラス」です。ガラスとガラスの間を真空状態にすることで、非常に高い防音効果を実現しています。また、防音効果を強化するために「防音合わせガラス」を使用したり、自動車の部品である「レゾネーター(特定の周波数の音を軽減する部品)」を取り入れた製品もあります。
二重窓(内窓)
二重窓は、既存の窓の内側に新たにもう一枚の窓を設置して、二重構造に施工したものです。窓と窓の間に空気層ができ、音の減衰を実現するため、高い防音効果が期待できます。新設する窓に合わせガラスや真空ガラスを採用すれば、より効果的な防音対策が可能です。
二重窓の大きな利点は、窓ガラスとサッシの両方を二重にできることです。ガラスのみを交換した場合、劣化したサッシの隙間から音漏れすることがありますが、二重窓では隙間が減少し、防音性能がさらに向上します。これにより、外部からの騒音対策や室内の音漏れ防止に高い効果を発揮します。
防音ガラスに交換する際の費用相場
防音ガラスへの交換にかかる工事費用は、採用するガラスの種類やグレードによって異なります。以下は、防音ガラスの交換工事にかかる費用相場です。
- 合わせガラス:40,000~60,000円
- 複層ガラス:50,000~80,000円
- 二重窓(内窓):60,000~150,000円
これらの費用には、窓ガラス本体の価格と取り付け工事費用が含まれていますが、業者や窓のサイズによって異なります。詳細な費用を把握するには、業者から見積もりを取ることをおすすめします。
防音ガラスの使用を検討する際のポイント
防音ガラスを適切に選ぶには、いくつかのポイントを把握することが大切です。また、防音効果をさらに高める方法もあります。次に、防音ガラスの使用を検討する際に知っておくべき3つのポイントをご紹介します。
引き違い窓は二重窓がおすすめ
住宅の窓として一般的な引き違い窓は、横にスライドさせることでスムーズに開閉できるメリットがあります。しかし、開き窓と比較すると気密性が低いため、防音性の高い窓ガラスに交換しても、隙間から音が侵入する可能性があるでしょう。
引き違い窓に防音ガラスを使用することは可能ですが、上下左右に隙間が生じる構造上、十分な防音効果を得るのが難しい場合があります。そのため、しっかりと防音対策を施したい場合には、引き違い窓の内側にもう一枚窓ガラスを設置し、二重窓にすることが効果的です。二重窓はガラスの間に空気層を作るほか、サッシも二重になるためより高い防音効果が期待できます。
防火地域にある住宅は二重窓がおすすめ
防火地域にある住宅には、防火基準を満たした窓ガラスの設置が義務付けられています。このため、窓ガラスには網入りガラスが採用されており、防音性は重視されていません。
防火地域では防音ガラスへの交換が難しいため、防音対策には二重窓の設置が有効です。二重窓は、既存の網入りガラスの内側に新たな窓を設置するため、防火基準を気にする必要がありません。二重窓は防音効果を高め、窓サッシの隙間からの音漏れも防止します。
ただし、防火地域では建物ごとに求められる窓ガラスの基準が異なるため、自治体への事前確認をおすすめします。
防音性能を高めるためにサッシを交換した方がいい場合もある
窓の防音性を高めるためには、窓ガラスの交換のみでは不十分な場合があります。特に、サッシがアルミ製の場合、隙間から音が侵入しやすいため、ガラスを防音ガラスに交換しても外の音や室内からの音漏れを完全に防ぐのは難しいです。
防音性能をさらに向上させるためには、ガラスの交換に加えてサッシの交換も検討する必要があります。樹脂製のサッシは特に高い気密性を誇り、防音性能の大幅な向上が可能になります。樹脂サッシと防音ガラスの組み合わせで、より効果的な防音対策が可能です。
ただし、ガラスとサッシを同時に交換すると費用が高くなるため、費用を抑えながら防音性を高めたい場合は、二重窓の設置が効果的です。二重窓は新たに窓を設置するのみで、既存のサッシをそのまま利用できるため、取り外し作業がなく、設置費用を抑えながら防音対策を強化できます。
ただし、引き違い窓の場合、既存のサッシをそのまま利用することはできません。二重窓を設置する際は、既存窓の内側に専用フレームを取り付け、新しい窓を設置します。
換気口の対策も必要
2003年以降に建てられた住宅には24時間換気システムが義務付けられており、給気口を通じて外気が室内に取り込まれます。そのため、防音仕様ではない給気口は音の侵入口となる可能性があるでしょう。
特に、排気が機械で行われる第3種換気が採用されている住宅では、自然に外気が入る仕組みになっており、給気口から音が侵入することがあります。この場合、窓の防音対策では不十分です。
窓の防音対策を行う際には、給気口の防音対策も同時に行うことが重要です。給気口を適切に防音することで、より効果的な音の遮断が実現できます。
集合住宅の場合は防音ガラスに交換できない場合がある
賃貸住宅では、防音ガラスの設置が難しいです。リフォーム工事が必要ですが、賃貸では部屋を改修できないため、防音カーテンなどの代替手段を使うことになります。防音ガラスの導入を希望する場合は、事前に家主の許可が必要です。
分譲マンションでは、窓ガラスは共用部分として扱われることが多く、住人の意向では交換できません。しかし、二重窓の設置は可能なため、防音対策としては有効です。ただし、この場合も管理規約などの確認が重要です。
自分でできる窓の防音方法
窓からの騒音や音漏れを軽減するために、以下の対策が有効です。
- 遮音カーテンを取り付ける
- 遮音テープで隙間を塞ぐ
- 防音シートを貼る
- 防音ボードを設置する
ただし、賃貸住宅の場合、強力なテープや穴をあける方法は修繕が必要になることがあるため、事前に管理会社に確認することをおすすめします。また、設置によって室内が暗くなるなどのデメリットもあります。さらに、窓の開閉ができなくならないように注意しましょう。
まとめ
防音ガラスによる窓の防音対策は、騒音の軽減や音漏れ防止に効果的です。防音ガラスには合わせガラス、複層ガラス、二重窓などの種類があり、それぞれの特徴を考慮して選ぶことが重要です。
自分でできる方法として、遮音カーテンや防音シート、遮音テープによる対策などがありますが、賃貸住宅では管理会社に事前確認が必要となります。
適切な防音対策を選ぶためには、予算や居住環境に応じて、各防音ガラスのメリットとデメリットを慎重に検討することが大切です。
執筆年月日:2025年1月