窓ガラスの台風対策|直撃する前の準備について解説

毎年、年間平均で約25〜26個の台風が発生し、このうち約11〜12個が日本に接近しています。
2024年8月には「台風10号」が九州地方を直撃し、九州を含め14県で120人以上がケガをしました。暴風域付近では、屋内に避難していても飛来物で割れた窓ガラスの破片でケガをすることもあり、非常に危険です。
そこで今回は、台風が直撃する前に準備しておきたい窓ガラスの台風対策について解説します。
台風の上陸数は増加傾向にある
毎年、発生する日本の台風上陸数は増加傾向にあります。気象庁が公表した台風の統計資料によると、10年ごとの大きな周期でみた日本の台風上陸数は以下の通りです。
- 2003年~2013年:30件
- 2014年~2024年:37件
特に、2018年以降は、地球温暖化による気候変動が日本の台風上陸数に大きな影響を及ぼしています。
2023年に環境省が発行した資料や海洋研究開発機構(JAMSTEC)のシミュレーションでも、このまま地球温暖化が進めば台風の勢力が増し、強風や洪水・高潮などの被害はさらに大きくなると予測されています。
台風時に窓ガラスが割れる原因
台風時には、窓ガラスをガタガタ揺らす強風の音で眠れないという方もいらっしゃるでしょう。「もし割れてしまったら…」と心配されるのも、無理はありません。
この章では、窓ガラスが台風で割れる原因について説明しましょう。
飛来物が窓ガラスにぶつかって割れる
まずは、飛来物が窓ガラスにぶつかって割れることが考えられます。強風で、木片や落ちているゴミなどが空中に巻き上げられている光景を見たこともあるでしょう。
台風の大きさにもよりますが、ビルなどに設置されている看板や家屋の屋根の瓦などが風で運ばれ、風向きに面している窓にぶつかって割れることが多いようです。
もし「台風の目」の近くに石など重量のある硬いものが落ちていれば、風に運ばれて窓ガラスにぶつかることがあります。
風圧で割れる
台風の風圧で窓ガラスが割れることもあります。住宅の窓枠にはめられているガラスは、全て同じわけではありません。用途によって、それぞれ厚みや大きさ・種類が異なります。
代表的なガラスの種類は、次の3つです。
ガラスの種類 |
主な用途 |
厚み |
---|---|---|
フロート板ガラス |
自動車のウィンドウ・一般的な住宅の窓ガラスなど |
3~25mm |
ペアガラス/複層ガラス |
戸建て住宅など |
12~34mm |
合わせガラス/防災防犯ガラス |
自動車のフロントガラスなど |
3~19mm |
ものに風が当たった際に発生する圧力を風圧力といいますが、窓ガラスの許容風圧力は「フロート板ガラス<ペアガラス<合わせガラス」の順で強くなります。
ペアガラスはガラスの中空層にガスを封入したもので、合わせガラスは2枚のガラスの間に中間膜が挟まれているのが特徴です。
特に、合わせガラスは仮に台風による石などの飛来物で窓ガラスが割れても、破片が周囲に飛散しないため、ケガのリスクを低減できます。
台風で窓ガラスが割れた場合のリスク
台風でガラスが割れた場合のリスクは、大きく分けて5つあります。
- ガラスの破片が周囲に飛び散ってケガをしやすい
- 床にガラスの破片が飛び散るため、避難時に歩きづらい
- ガラスの割れた窓から強風・豪雨が入り込み、浸水しやすい
- 窓から入る強風や豪雨でものがぶつかり、家財道具が破損することがある
- 窓からの強風で屋根が吹き飛ぶことがある
実際、2024年に発生した台風第10号では、窓ガラスが割れるだけでなく、家屋の全半壊が30棟、一部損壊が1,069棟ありました。台風のスピードは変動するため、発生してからでは間に合わないかもしれません。
台風で窓ガラスが割れることのないよう、常に最新情報の収集を心がけ、事前に準備しておくと安心です。
台風前の窓ガラスの対策方法
台風で窓ガラスが割れるリスクを回避するには、いくつかの方法があります。この章では、ご家庭でもできる窓ガラスの6つの台風対策について紹介しましょう。
周りのものを撤去する
まずは、窓ガラスの周りのものを事前に撤去しましょう。台風上陸前のニュースで「ベランダや庭の植木鉢を室内に入れておくように」と呼びかけているのをご存知の方も多いと思います。
台風の規模によっては、ある程度の重量がある植木鉢なども強風で窓に直撃する可能性があるため、注意しましょう。庭の物干し竿や自転車が、窓ガラスを割ってしまうこともあるかもしれません。
お住まいの地域に台風が上陸するおそれがあるとわかったら、庭やベランダに置いてあるものを早めに室内に取り込んでおきましょう。
養生テープで補強する
養生テープで補強するのも台風対策になります。養生テープとは、建物や家具の汚れや傷を防ぎ、窓ガラスが割れた時の破片が飛び散らないようにする粘着性のテープのことです。
養生テープはマスキングテープと同様にはがしやすい仕様で、「米」の文字を書くように窓ガラスの縦・横・左右斜めに貼り付けて使用します。
ただし、あくまで窓ガラスの破片の飛散防止が目的で、飛来物で窓ガラスが割れることを防ぐわけではありません。補強後は、万が一、窓ガラスが割れた時に備えて室内のカーテンを閉め、なるべく離れたところに避難しましょう。
なお、養生テープを貼ると屋外の見通しが悪くなるため、台風が上陸する度に張り替えが必要です。養生テープの粘着性が劣化した場合は、はがした時に窓ガラスに跡が残ることもあります。
飛散防止フィルムで補強する
飛散防止フィルムで補強するのも、窓ガラスの台風対策のひとつです。飛散防止フィルムも養生テープと同様、ガラスが割れないようにするものではありません。その名の通り、窓ガラスが割れた際に破片の飛散を防ぐものです。
台風のほか、地震・火事などの防災時や、侵入者が窓ガラスを割るまでの時間を長引かせる防犯対策にも便利です。水で貼り付けられるものも市場に多く出回っており、ご家庭でも簡単に使用できます。
フィルムの厚さはメーカーによってさまざまですが、台風で飛来物を貫通させない目的の場合は、厚めのフィルムを選ぶとよいでしょう。
なお、防犯性の高い認定CPマーク付きの防犯フィルムは、一般的な飛散防止フィルムよりも高額になります。一時的に台風をしのぐ目的であれば、飛散防止フィルムで十分です。
ダンボールで補強する
ダンボールで補強するのも、手軽にできる台風対策です。使い方は簡単で、窓ガラスのサイズに合わせて切ったダンボールをガムテープで貼り付けます。先述の養生テープと同じように、ガムテープを「米」の文字のように貼るとさらに効果が高まります。
窓ガラスに養生テープを直接貼り付けると跡が残る可能性があるため、ダンボールの上から貼るのも一案です。
シャッターを取り付ける
シャッターを取り付けるのも効果があります。手動のシャッターを窓ガラスに取り付ける費用の目安は、概ね6万〜25万円程度です。安い買い物ではありませんが、大きな効果を期待できます。
シャッターのメリットは、ダンボールや養生テープなどの応急措置とは違って効果を持続できることです。長期的なコストを考慮すれば、台風の暴風域に入りやすい地域にお住まいのご家庭では取り付けを検討すべきでしょう。
防災防犯ガラスに交換する
防災防犯ガラスに交換するのも、台風前の窓ガラス対策のひとつです。防災防犯ガラスは、先述の合わせガラスのことで、1.5ミリ以上の厚さを持つ2枚のガラスの間に合成樹脂の特殊膜を圧着させています。
一般的な住宅に使用されるフロート板ガラスの飛散率は約50〜60%ですが、防災防犯ガラスの飛散率は約2%ですから、飛散防止の効果は大きいでしょう。また、窓ガラスに穴を空けて侵入する「こじ破り」などの防犯対策としてもおすすめです。
メーカーにもよりますが、紫外線防止効果を施したものを使用すれば、室内の家具やカーテンの「色あせ防止効果」も期待できます。このほか、地震の揺れで重量のある家具が窓ガラスに衝突した際も、被害を最低限に食い止められるでしょう。
窓ガラスが割れてしまったときの応急措置方法
万が一、台風で窓ガラスが割れてしまったときは、どうすればよいでしょうか。この章では、ご家庭でもできる2つの応急措置を紹介します。
ヒビが入ってしまった
窓ガラスにヒビが入ってしまった場合は、該当部分に補修テープを貼るとよいでしょう。メーカーにもよりますが、補修テープは数百円〜2,000円程度で購入できます。室内から、窓ガラスのヒビが割れた部分の全体を覆うようにテープで塞ぎましょう。
なお、何かの拍子に亀裂が大きくなって窓ガラスが割れる可能性もあります。応急措置をした後は、早めに新しいものに取り替えましょう。
穴が空いてしまった
窓ガラスに穴が空いてしまったときは、補修テープのみでは十分ではありません。穴が空いた部分より少し大きめに切ったダンボールで穴を覆い、補修テープやガムテープなどで周りを固定しましょう。
穴の空いた窓ガラスは耐久性が弱くなるため、そのまま放置しておくのは危険です。急場をしのいだら、なるべく早く専門業者に相談しましょう。
まとめ
「備えあれば憂いなし」ともいうように、台風で窓ガラスが割れないよう前もって対策を講じておくと安心です。特に、頻繁に台風が上陸する地域にお住まいのご家庭では、防災防犯ガラスやシャッターの取り付けも大きな効果を期待できます。
万が一、台風で窓ガラスにひび割れや穴ができてしまった場合は、今回ご紹介した応急措置を実践し、早めにお近くの専門業者に相談しましょう。
執筆年月日:2025年1月