おひとりさまにも終活が必要な理由とは?やるべきことも解説

  • 終活・エンディング
おひとりさまにも終活が必要な理由とは?やるべきことも解説

少子高齢化が進んでいる日本では、老後の不安を抱えているおひとりさま(独身)が増えています。不測の事態に備えて終活を行っておくと、親族や友人に迷惑をかけずに自分の理想の最期が実現できるでしょう。

この記事ではおひとりさま(独身)の終活でやるべきこと、メリット、リスクを解説します。終活の具体的な内容や、時間や費用がどのくらいかかるのかがわかるため、ぜひ最後までお読みください。

おひとりさま(独身)の終活とは

まずは、終活とはどのようなものなのか、そしておひとりさま(独身)の孤独死の現状について解説します。

そもそも終活とは?

終活は、人生の終わりを見据えた活動のことです。財産や所持品の整理、医療や介護の方針の決定、お墓や葬儀の準備など、相続に向けた準備全般を指します。

終活により、自分が亡くなった後の財産の使い道などを親族や友人に伝えられます。自分の希望を実現するだけでなく、残された周囲の人たちの心労の軽減が可能です。

おひとりさま(独身)の孤独死の現状

内閣府の調査によると、東京23区内におけるおひとりさま(独身)のうち、65歳以上の人の自宅での死亡者数は、平成24年以降増加傾向となっており、令和4年に4,868人となっています。

また、内閣府の平成30年の調査によると、おひとりさま(独身)の50.8%が孤立死を身近な令和問題と感じています。

1人暮らしの高齢者が孤立死しないよう、社会的孤立による生きがいの低下や生活不安を防ぐことが課題です。

引用 : 令和6年版高齢社会白書|内閣府
引用 : 令和3年版高齢社会白書|内閣府 

おひとりさま(独身)が終活を行うメリット

おひとりさま(独身)が終活を行うとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つに分けて解説します。

老後や死への不安の解消につながる

終活によって人間関係を見直し、思い出を整理することで、老後や死への不安を解消できます。友人・知人に連絡を取ったり、自治体の訪問サービスに登録したりすることで、人とのつながりが生まれます。

また、身の回りの物を整理し、人生を振り返ることで、新たな目標が見つかるかもしれません。終活を通じて心配事が減り精神的に安定すると、より充実した人生を送れるでしょう。

親族や周囲への負担を軽減できる

終活により、介護や死後の手続きについて情報を整理し共有できていると、親族や友人への負担を軽減できます。おひとりさま(独身)が亡くなると、死後の手続きは周囲の人に委ねられますが、財産管理・葬儀・医療・家の処分など対応が多岐に渡りとても大変です。事前に準備しておくことで、周囲の人は混乱せずに対応ができます。

財産の管理・分配を自分の意思で決められる

おひとりさま(独身)が亡くなると、通常では、遺産は法定相続人(親や兄弟姉妹)が相続しますが、活により自分で相続先を決めることも可能です。預金・不動産・保険などの資産を洗い出し、遺言書を作成すれば、財産の管理・分配が明確になります。相続税を考慮し生前贈与を行ったり、信頼できる団体に寄付したりすることも可能です。

おひとりさま(独身)が終活をしないことによるリスク

おひとりさま(独身)が終活をしないと、以下のようなリスクが発生し周囲の人に迷惑がかかるかもしれません。詳しく解説します。

孤独死の危険性

おひとりさま(独身)は体調が悪くても誰にも気付かれず、救急対応の機会を逃す可能性があります。孤独死となり長期間発見してもらえないと、親族や勤務先への連絡が遅れてしまいます。警察により現場検証と親族への連絡が行われるため、残された人はショックを受けるかもしれません。

財産の相続のトラブル

遺言書がないと、財産が把握できず相続先もわかりにくいため、残された人たちが揉める可能性があります。法定相続人である親や兄弟姉妹に、自分が希望しない形で財産が分配されるかもしれません。

相続手続き完了まで時間がかかると、資産が使えず相続税の支払いが滞る可能性もあるでしょう。もし、相続人がいない場合は、財産は全て国庫に収められます。

親族や周囲の人に迷惑がかかる

財産の有無・所在・総額や、法定相続人がどこに住んでいるのかなど、調査に時間がかかってしまうと、親族や周囲の人に迷惑がかかります。おひとりさま(独身)の方が亡くなった部屋の片付けを手伝いながら、保険の書類、銀行の通帳、運転免許証などの貴重品を探して各種手続きを進める必要があり、予期せぬ費用や精神的ストレスが蓄積されます。

おひとりさま(独身)の終活でやるべきこと

おひとりさま(独身)の終活でやるべきことはたくさんあります。特に重要な5つの項目について見ていきましょう。

身の回りの断捨離

終活は、身の回りの断捨離から始めるのがおすすめです。不要なものは処分・売却・寄付を検討し、重要な書類は整理して保管していきます。家の中の保管場所を決定し、専用の箱やラベルを用意しましょう。

写真などデジタルデータの整理や、SNSアカウントのIDやパスワードの管理も重要です。思い出の品を選別しながら、人間関係を振り返ることで、気持ちの整理もできるでしょう。

財産の整理

おひとりさま(独身)の終活では、財産の整理も大事です。銀行口座や保険を見直し、公共料金やクレジットカードの利用状況を確認しておきましょう。

不動産についても関係書類がまとめられていると、相続手続きがスムーズです。財産が整理されていると、自分の死後に周囲の人が調査する手間が不要になり、負担を軽減できます。

身元保証人を決める

自分が入院・要介護になると、手続きや費用の支払いで身元保証人が必要となるため、終活であらかじめ決めておくことをおすすめします。親族や知人に身元保証人を依頼できない場合は、民間の身元を保証するサービスに申し込む方法もあります。

身元保証人と法定相続人が異なる場合は、連絡方法や役割分担を事前に決めておきましょう。

葬儀やお墓の準備

おひとりさま(独身)の終活では、葬儀やお墓の準備も自分で行う必要があります。葬儀の形式、見積もり、お墓の選択など、生前に決めておけば希望通りになる可能性が高いでしょう。

身元保証人と同様に、親族や知人を頼れない場合は、死後の手続きを委託するサービスの申し込みをおすすめします。

エンディングノート・遺言書の作成

エンディングノート・遺言書を作成すると、財産の分配や相続先について自分の希望を伝えることができます。親族の連絡先、延命治療の希望の有無、預金口座一覧、葬儀の希望、そして感謝の言葉などを書き記しましょう。

遺言書は法的効力があるため、弁護士や司法書士など専門家のアドバイスを受けて作成することをおすすめします。エンディングノートは法的効力がないため、市販のノートやパソコンのメモ帳など好きなツールで作成が可能です。

おひとりさま(独身)の終活で活用できる制度

ここでは、おひとりさま(独身)の終活で活用できる制度を3つ解説します。

成年後見制度

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な人を支援するための制度です。本人または親族が家庭裁判所に申立てを行うと、信頼できる親族や専門家が後見人として選出され、制度を利用できます。

成年後見制度は2種類あり、本人の判断能力が低下する前であれば任意後見制度が、認知症などにより判断能力が低下した後なら法定後見制度が利用可能です。

成年後見制度の申請には費用と時間がかかりますが、本人の代わりに後見人が財産の管理、不動産の売却、福祉サービスの契約などの手続きをスムーズに代行できるため、親族間のトラブルを回避できます。ただし、が亡くなった後の手続きは行えないため注意してください。

家族信託制度

家族信託制度は、自分の財産の管理を親族に委託する制度です。前述の成年後見制度では自身での財産の使用に制限がありますが、家族信託制度では、財産の利益を受け取る権利は残るため、本人は財産を自由に使用できます。

本人が認知症になった場合は、生活費の支払いなどは家族信託制度を結んだ親族などが代行します。家族信託制度は、おひとりさま(独身)が財産管理や死後の手続きを円滑に進めるために有効です。

家族信託制度を利用するには、本人に判断能力が残っているうちに契約が必要となるため、早めに親族や専門家への相談をおすすめします。自分が最も信頼できる人に依頼しましょう。

死後事務委任契約

死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の事務手続きを、生前に親族や専門家に依頼します。葬儀の手配、住居の退去、行政への届け出など各種手続きを代行するだけでなく、親族や友人・知人に訃報を伝えてもらうことも可能です。

死後の事務処理を円滑に進められるため本人の意思を実現しやすく、親族の負担も軽減されるでしょう。信頼できる委任先の選定が重要なポイントになるため、契約を検討する際は複数の専門家に相談することをおすすめします。

注意点として、死後の相続に関する手続きは含まれないため、遺言書は別途作成しておきましょう。

おひとりさま(独身)の終活におけるよくある質問

おひとりさま(独身)が終活において感じる、よくある疑問や不安を解説します。

女性の一人暮らしでも終活は必要?

終活の内容は性別や家族構成によらず同じであるため、女性の一人暮らしの方も終活を推奨します。内閣府の令和2年の調査によると、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向にあり、男性が約231万人に対して女性は約441万人と2倍近くの差があります。

核家族化、配偶者との死別、平均寿命の長さにより、女性が一人暮らしとなるケースが増えているため、終活により孤独死や死後の不安を解消しましょう。

終活はいつから始めるべき?

終活を始める時期に明確な決まりはありません。子どもの独立、自分の体調の変化、定年退職、親の介護などのきっかけにより、50代から60代にかけて始める方が多いようです。

体力や判断力が充実しているうちに終活に着手できると、不測の事態に備えられます。70代になったら、財産管理、保険の見直し、葬儀の準備など具体的に検討しましょう。

終活に必要な費用は?

終活の内容によって必要な費用は大きく異なりますが、数十万円から数百万円かかります。葬儀やお墓の準備、遺言書の作成、弁護士など専門家への相談、任意後見制度などの利用により、総額が変わります。終活を進めるにあたり、予算を先に決めておくと安心です。

まとめ

終活をしておくと、もしものことがあっても周囲に迷惑をかけずに、葬儀や財産などについて自分の希望を叶えられます。身の回りの整理だけでなく、時間や費用もかかるため非常に大変ですが、健康なときこそライフプランを見直すチャンスです。元気なうちに終活を始めて、残された時間を大切に過ごしましょう。

執筆年月日:2025年1月
※内容は2025年1月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。

記事一覧に戻る