遺産分割協議書はどこでもらえる?自分で作成する方法や注意点について解説

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遺産分割協議書はどこでもらえる?自分で作成する方法や注意点について解説

亡くなった方が遺言書を遺していない場合、遺産の名義変更などを行う際に「遺産分割協議書」の提出が必要になります。しかし、遺言書がない相続を初めて経験する方の中には「どこでもらえる?」と疑問をもつ方も多いでしょう。本記事では、遺産分割協議書の入手方法や作成方法、注意点について詳しく解説します。

遺産分割協議書とは?

亡くなった方が生前に所有していた財産について、「誰が」「どの財産を」相続するか話し合うことを遺産分割協議といいます。この協議には相続人全員が参加します。そして、協議の結果を文書にまとめたものが、遺産分割協議書です。遺言書が残されていない、または遺言書に法的効力がない場合に作成します。

遺産分割協議書は法的に義務づけられた書類ではないものの、公的機関や金融機関での手続きの際に提出が必要です。また、相続人同士のトラブルを防ぐ役割も期待できます。

遺産分割協議書はどこでもらえる?

結論として、遺産分割協議書は相続人自らが作成する書類であり、どこかの機関でもらえる書類ではありません。前述のとおり、遺産分割協議書は相続人同士の話し合いをもとに作成され、内容が多岐にわたるためです。

遺産分割協議書の作成方法は後ほど詳しく解説しますが、まずは国税庁と法務局が用意している遺産分割協議書のひな形を紹介します。

国税庁の遺産分割協議書ひな形

国税庁のホームページには、遺産分割協議書の記載例が紹介されています。ただし、相続税申告のために用意されたファイルのため、詳しい解説が示されているわけではありません。参考程度に確認するとよいでしょう。

参考:相続税の申告書の記載例|国税庁

法務局の遺産分割協議書ひな形

法務局のホームページにも、遺産分割協議書のひな形が公開されています。記載例は、妻と子ども2人が不動産を相続したケースです。不動産以外の財産を相続する場合は適さない書面のため、参考程度にとどめておきましょう。

参考:Taro-17 相続(遺産分割のとき) 記載例│静岡地方法務局

遺産分割協議書の作成方法

遺産分割協議書は誰が作成しても構いません。ここでは、自分で作成する方法を紹介するとともに、各専門家への依頼が適しているケースも解説します。

自分で作成する

自分で遺産分割協議書を作成する場合は、インターネットでひな形を検索したり、専門書を参考にしたりする方法が一般的です。ひな形は無料でダウンロードできるため、コストを削減できるのが大きなメリットといえます。

ただし、遺産分割協議書の内容は、遺産や相続人の人数によって大きく異なります。記載内容には具体性が求められ、遺産の種類や価値、相続人の人数、財産の分割方法など、第三者が明確に把握できるよう記載しなければなりません。

その点、専門家への依頼は費用がかかりますが、相続の手続きをスムーズに進められるメリットがあります。専門家を選ぶ際は、遺産内容や状況によって適切な士業を選ぶことが重要です。以下の解説を参考にしてみてください。

行政書士に依頼する

遺産分割協議書の作成は行政書士に依頼することができます。費用相場は3~8万円で、ほかの専門家に比べて費用が抑えられるメリットがあります。

行政書士には、遺産分割協議書作成のほか、預貯金の払戻しや解約、自動車・有価証券の名義変更などの依頼も可能です。ただし、不動産の名義変更や相続税の申告には対応できません。そのため、行政書士への依頼は以下の条件を満たすケースが適しています。 

  • 遺産に不動産が含まれていない
  • 相続税が発生しない
  • 相続人同士のトラブルや争いがない

行政書士に依頼する際は、事前に費用や対応可能な業務を確認しておくと安心です。複数の事務所に問い合せ、費用を比較するのもよいでしょう。

司法書士に依頼する

遺産に不動産が含まれている場合は、司法書士への依頼が適しています。不動産の所有権を相続人に移転する「相続登記」の代行は、司法書士に限られる業務であるためです。次の条件にあてはまる方は、司法書士への依頼を検討してみましょう。 

  • 遺産に不動産がある
  • 相続税が発生しない
  • 相続人同士のトラブルや争いがない

遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼する場合、費用相場は4~12万円です。相続登記の代行と併せて依頼するのが一般的ですが、その場合は別途費用が発生します。

また、費用は相続人の人数や遺産内容によって変動するため、注意が必要です。費用相場はあくまで目安とし、依頼内容を明確にしたうえで司法書士事務所に相談してみましょう。

税理士に依頼する

遺産分割協議書の作成と相続税の申告を併せて依頼したい方は、税理士への相談がおすすめです。遺産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納付が必要になります。相続税の申告には期限が設けられているため、早めに準備を始めることが重要です。

以下の状況にある方は、税理士へ相談してみましょう。 

  • 遺産が高額で相続税が発生する
  • 節税対策のアドバイスが必要

税理士への依頼は、遺産分割協議書の作成と相続税の申告をセットで行うケースが多いです。その場合の費用相場は、遺産総額の0.5~1.0%とされています。たとえば遺産総額が1億円の場合、税理士報酬は50~100万が目安です。

ただし、税理士事務所によって費用は異なります。相場を参考にしながら慎重に検討することが重要です。

弁護士に依頼する

相続人同士のトラブルがある場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。紛争に介入できるのは、専門家の中で弁護士に限られているためです。

遺産分割協議書の作成には相続人全員の合意が必要ですが、協議がまとまらないケースもあります。その場合、調停や審判によって遺産分割を成立させることもあるでしょう。以下のような要望がある方は、弁護士への相談がおすすめです。 

  • 遺産分割協議書の作成から協議のアドバイスまで一括で任せたい
  • 遺産分割協議の代理人を依頼したい

弁護士へ依頼する場合の費用は、事務所によって大きく異なります。これは、弁護士費用が自由化されているためです。多くの事務所が初回の無料相談を行っており、まずは費用や協議内容を含めて相談してみるのがおすすめです。

遺産分割協議書を自分で作る場合の流れ

遺産分割協議書を自分で作る場合、作成にとりかかる前に行うべきことが多くあります。これから解説する流れを参考に、状況に合わせて自分で行うか専門家に依頼するかを検討してみてください。

相続人の調査

遺産分割協議書は相続人全員の同意を得て作成します。そのため、まずは誰が相続人にあたるかを調査し、特定する必要があります。亡くなった方に配偶者や子どもがいない場合、相続人が兄弟姉妹や甥、姪になるケースもあり、調査に時間を要することもあるでしょう。

相続人の調査が終われば、次に必要な書類を準備します。以下は、遺産分割協議書作成に必要な書類の一例です。 

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 相続放棄をする方がいる場合、その方の相続放棄申述受理証明書または相続放棄申述受理通知書

相続の内容によっては、相続人全員の住民票が必要になる場合もあります。さらに、亡くなった方が生前に転籍を繰り返していた場合、戸籍謄本を集める作業に時間がかかることが考えられます。

相続財産の調査

次に、相続財産の調査を行います。相続財産は遺産と同じ意味をもち、現金や預貯金、不動産、貸付金、株式などが対象です。調査は以下の書類などをもとに進めます。 

  • 預貯金通帳、口座残高証明書
  • 不動産における登記事項証明書、公図、地積測量図
  • 固定資産評価証明書
  • 株式の残高証明書
  • 金銭消費貸借契約書

これらの書類は法務局や金融機関、市町村役場での取得が可能です。複数の機関を訪れる必要があるため、相続財産が多いほど調査に時間がかかります。

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

相続人と相続財産の調査が終わりしだい、相続人全員で遺産分割協議を行います。事前にスケジュールを調整し、全員が集まりやすい日程をいくつか決めておきましょう。

相続人全員が同じ場所に集まるのが理想ですが、どうしても難しい場合は、電話や郵便などを活用することもできます。ただし、協議内容は相続人全員の合意が必要です。

遺産分割協議の場で協議書を作成できない場合は、一旦、合意内容をまとめた書面のコピーを全員に配布し確認してもらいましょう。その後、正本を郵送し、署名捺印を行う方法も検討できます。

遺産分割協議書の提出先

最後に、主な遺産分割協議書の提出先を紹介します。

【法務局】
不動産を相続する際の相続登記は、管轄する法務局で行います。相続登記は義務化されており、相続発生から3年以内の手続きが必要です。不動産が複数ある場合は、それぞれの法務局に書類を提出します。

【税務署】
相続税申告の際、税務署に遺産分割協議書を提出します。申告期限は相続発生から10ヶ月以内です。不備があっても期限は延長されないため、余裕をもって準備しましょう。

【金融機関】
銀行などの金融機関で口座の解約手続きをする際、遺産分割協議書が必要です。ただし、金融機関によってはほかの書類で対応できる場合もあります。事前に確認してみるとよいでしょう。 

【証券会社】
上場株式や投資信託を相続する場合は証券会社で名義変更手続きを行いますが、金融機関と同様に、ほかの書類で対応してくれる場合もあります。なお、非上場株式の場合は発行元の会社で手続きが必要です。

【運輸支局】
自動車を相続する場合、運輸支局で名義変更を行います。車の査定額が100万円以下の場合は、遺産分割協議書より簡易的な「遺産分割協議成立申立書」の提出でよいケースもあるため、事前に確認しておきましょう。なお、軽自動車の名義変更は、運輸支局ではなく軽自動車検査協会で行います。その際、遺産分割協議書の提出は不要です。

まとめ

遺産分割協議書は、相続人が作成する書類であることを解説しました。インターネット上のひな形を利用することも可能ですが、記載内容が複雑な場合は、専門家に依頼するケースも多くあります。費用はかかるものの、正確な遺産分割協議書を効率よく作成したい方は、状況に合った専門家への依頼を検討してみてください。

執筆年月日:2025年1月
※内容は2025年1月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。

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