相続の相談は誰にすればいい?無料の相談先や相続の注意点を解説

  • 終活・エンディング
相続の相談は誰にすればいい?無料の相談先や相続の注意点を解説

相続について「どこに相談すればよいか?」と問われたら、悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

いざその時になったら、相続する側も相続される側も、じっくり考えている余裕はないかもしれません。無料で依頼できる相談先や、相談できる業務を事前に把握しておけば、慌てなくて済むでしょう。

そこで今回は、相続に関する無料の相談先や相談する際の注意点について詳しく解説します。

相続に関する主な相談先と特徴

相続については、内容によって相談先を選ぶことをおすすめします。相続に関する主な相談先は、次の8つです。

  1. 弁護士
  2. 税理士
  3. 司法書士
  4. 行政書士
  5. 市区町村役場(自治体)
  6. 法テラス
  7. 税務署
  8. 信託銀行

この章では、これらの相談先とその特徴について説明します。相談したい内容から、どの相談先に依頼すべきかを検討しましょう。

弁護士

弁護士は、相続税の申告を除き、相続で対応できる業務範囲が広い専門家ともいえます。弁護士に依頼できる主な業務は、主に8つです。

  1. 法定相続人に関する調査(戸籍謄本・住民票除票の収集など)
  2. 相続財産の調査(残高証明書の収集など)
  3. 遺言検認の申立
  4. 遺産分割協議書の作成
  5. 相続放棄の申立
  6. 故人の預貯金の解約払い戻し
  7. 有価証券の名義変更
  8. 相続人同士の紛争の解決

遺産分割に関する弁護士関与の割合は約85%です。この数値は、相続人同士では思うように話が進まないことにも起因しています。相続に関して「相続人が多くて遺言状がある」「親族間で紛争が起こりそう」など、込み入った事情がある方は弁護士に相談するとよいでしょう。

税理士

税理士は税金に熟知している専門家で、さまざまな相続の手続きのなかで相続税の相談に適しています。税理士に相談できる相続に関する業務は、主に6つです。

  1. 相続税の申告や納税の手続き
  2. 生前贈与など効果的な節税対策
  3. 税務面での遺産分割の提案
  4. 株式や不動産などの相続財産の評価
  5. 税務署の税務調査への対応
  6. 事業承継を含む納税猶予制度の支援

遺産の額が大きいと事前に分かっているケースでは、節税対策を講じたほうがよい場合もあります。相続人同士で既に相続の内容に合意していて、税金の支払い時期や手順などを知りたい場合は、税理士に相談しましょう。

司法書士

司法書士は不動産登記に関する専門家で、相続で依頼できる主な業務は、次の7つです。

  1. 法定相続人に関する調査(戸籍謄本・住民票除票の収集など)
  2. 相続財産の調査(残高証明書の収集など)
  3. 故人の預貯金の解約払い戻し
  4. 不動産の名義変更
  5. 有価証券の名義変更
  6. 成年後見制度の申請のサポート
  7. 遺産分割協議書の作成

司法書士は、特に相続した財産に不動産がある場合の相談に適しています。また、「認定司法書士」に限定されますが、相続人同士の揉め事を解決するための交渉や手続きも可能です。

なお、業務上、司法書士個人や事務所が、法律事務所や弁護士と提携していることも珍しくありません。お住まいの地域に事務所がある場合は、不動産以外についても相談してみましょう。

行政書士

行政書士は、役所に提出する必要書類に関する専門家です。相続相談を依頼できますが、相談内容の範囲は弁護士より狭くなります。一般的に、故人が生前に遺言状の作成や代理を行政書士に依頼することが多いようです。

相続関係の書類で行政書士に依頼できる業務は、主に6つあります。

  1. 相続財産の調査
  2. 相続財産目録の作成
  3. 遺産分割協議書の作成
  4. 有価証券の名義変更
  5. 銀行預貯金の解約払い戻し
  6. 車両登記の名義変更

なお、行政書士は、相続に関する訴訟や調停・相続税申告の代理を受けることはできません。特に、行政書士への相談では、相続人同士で話し合いをスムーズに進め、揉め事が起きないよう相続財産目録の作成を依頼するとよいでしょう。

市区町村役場(自治体)

初めての相続相談には、市区町村役場(自治体)もおすすめです。「専門家に直接相談するのは敷居が高い」という方は、相談の予備知識の習得や専門家に依頼する必要性を検討する際に利用するとよいでしょう。

実際、地域密着の弁護士や税理士・司法書士などの専門家と協力し、予約制の無料相談を実施している市区町村役場(自治体)も多数存在します。

たとえば、次のようなケースは市区町村役場(自治体)に相談してみましょう。

  • 家族が亡くなって、今後に必要な手続きを知りたい
  • どの窓口に相続の手続きを相談すればよいか
  • 各種届を提出する際、どのような手続をとればよいか
  • 相続手続きに関する必要書類を取得したい

なお、市区町村役場(自治体)への相談は、基本的に当該市区町村(自治体)に在住または在勤している方が対象です。相談内容によっては、ほかの専門機関や所轄部署を紹介される可能性もあるため、効率的に進めたい方は事前に電話で確認しましょう。

法テラス

法テラスとは、政府が全国に設立した法的なトラブルの解決を目的とする総合案内所です。相続をはじめ、離婚・借金・DVなどの相談窓口や、弁護士・司法書士など専門家の斡旋が主な業務になります。

「直接、弁護士や司法書士には相談しづらい」、「経済的な余裕がなくて専門家に相談できない」という方は、この法テラスの無料の法律相談や費用立替え制度を利用しましょう。

なお、法テラスの無料相談を受けるには、次の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 収入などが一定額以下の方
  2. 調停や示談等の紛争解決や自己破産の免責などを含み、勝訴の見込みがないとはいえないケースであること
  3. 民事法律扶助の趣旨に適しているケース

1回の相談時間は30分で、相談回数は同一の相談内容に関して最大3回までです。なお、法テラスでは、特定の弁護士や司法書士の紹介はしていませんが、各県ごとの公式ホームページで法テラスに登録している弁護士一覧を閲覧できます。

事前に一覧を閲覧し、相談したい事務所や弁護士が決まっている場合は、依頼できるかどうかを問い合わせてみるのも一案です。

税務署

相続税に関しては、税務署にも相談できます。特に、税理士を通さず、自分で相続税を申請する方は利用するとよいでしょう。

電話の相談だけでなく、税務署の職員との面談も可能です。個人的な内容も相談できますが、税務署への相談は節税対策に関する相談ではなく、相続税の申告が中心になると心得ておきましょう。

信託銀行

信託銀行に相続相談を依頼する場合は、相談内容は金融関係に限定されます。たとえば、ご自身が相続で得た遺産の運用・贈与などです。

もちろん、依頼すれば、一般的な相続手続きも各金融機関と契約している顧問弁護士などと連携して対応してくれます。しかし、最終的に相談費用の総額が弁護士に直接相談するよりも高額になる可能性もあるため、注意しましょう。

相続の相談は無料相談もおすすめ

相続は、無料相談もおすすめです。特に、手続きの流れや書類の種類・書き方などの基本的な知識を得たい場合や大まかな流れをつかみたい場合に利用するとよいでしょう。

一般的に、無料相談は完全予約制で、相談日や相談回数も決まっているため、活用の際は何を相談したいのかを事前に明確にしておきましょう。

また、相談する専門家を自分で選ぶことはできません。利用する際は、お住まいの地域を管轄する市区町村役場や法テラスの公式ホームページなどで詳細を確認すると効率的です。

なお、無料相談後、正式に専門家に依頼する場合は、弁護士や司法書士などの専門家が所属している事務所と詳細を決めて契約することになります。

相談前に準備しておきたい関係書類

個人的な相続相談は、相続登記などの手続きを進める際、故人と相続人との関係を証明する公的書類を準備しなければなりません。また、故人に遺産がある場合は、残高証明書や不動産登記簿の写しなどの各種書類も必要です。相談前に関係書類を準備しておくと、効率的に相続相談を進められます。

ちなみに、相続相談で揃えておきたい書類は、下記の通りです。

  1. 遺言書(ある場合のみ)
  2. 相続人の相関図
  3. 故人の住民票除票
  4. 故人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  5. 固定資産税納税通知書
  6. 相続財産のわかるもの(例:通帳コピー・有価証券報告書・保険証券など)

特に、2024年4月1日付で、相続登記が義務化されました。登記を申請する際は、故人の出生から死亡までの戸籍謄本の写しが必要です。

当該書類は、2024年3月1日より開始された戸籍の広域交付制度により、相続人の最寄りの市区町村役場にて一括で取得できます。「平日は仕事で役所に行けない」という方は、郵送での取り寄せも可能です。相談で有益な情報を得るためにも、必要書類を事前に準備しておきましょう。

無料相談の流れ

相続に関する無料相談の流れは、次の4つのステップになります。

  1. 相談窓口にメールや電話で連絡する
  2. 相談する日時を予約する
  3. 「2」で決めた日時に無料相談を受ける
  4. 今後の依頼の有無・相談内容を検討する

相談日時が確定してからでも遅くありませんが、必要書類は、予約する段階で準備しておくと安心です。

また、資産運用や協議の進め方などは、必ずしも1つとは限りません。時間に余裕があれば、複数の団体の無料相談をセカンドオピニオンとしての活用もおすすめです。

専門家との相性や方針・相談費用などを十分検討したうえで、ご自身にとって適切な相談先を見つけましょう。

相続手続きは自分ですることも可能?

相続手続きは、自分ですることも可能です。ただし、インターネットで調べた情報のなかには誤った情報が含まれている可能性もあります。また、遺言状がある場合や不動産の持ち分が複雑なケースは、一般的な手順では進められないかもしれません。

相続人の間で揉め事が起きそうな場合も、専門家が第三者として仲介したほうが手続きをスムーズに進められます。やむを得ずご自身で手続きする際は、無料相談の活用も検討しましょう。

まとめ

相続では、「遺言状を作成したい」「遺言状の内容ついて相談したい」「遺産または借金を相続した」など、さまざまな相談ごとがあります。

また、故人との関係性にもよりますが、相続人間の話し合いが進捗せず、長引くケースも多いようです。無料の相続相談で解決できない場合は、必要に応じて専門家にも相談し、スムーズに手続きを進めましょう。

執筆年月日:2025年1月
※内容は2025年1月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。

 

記事一覧に戻る